「仮面ライダーオーズ」(終)
始まってから中盤辺りまで、前年「W」に燃え上がり過ぎたこともあってどうにも乗り切れなかったけれど、話の骨子を「火野映司」という個人に絞った後半からグググイッと面白くなってきて、順調に理想的な大団円を迎え、本当に面白かった最終回でございました。
ただ、シリーズ構成はやっぱり大分、難があったと言わざるを得ないと思います。というか、このシリーズの設定自体が 4 クール持たせるだけのポテンシャルじゃなかったというか……。もし、「欲望」をキーワードにした、「欲望」を諦めた映司、「欲望」を渇望するアンク、そして「欲望」をまだ知らない比奈、という三角の関係の葛藤と変化と成長(←オーズ調)だけを描く 2 クール作品だったら、本当に傑作になったような気が致します。
特に、終盤のあるエピソードで一時的にアンクと離れた比奈の兄・信吾が比奈にした「お前は映司くんもアンクも俺も、全て助けようとしている」という指摘に対する比奈の苦悩、その目の前で自分を犠牲にしながら「欲望」を完遂せんとする映司とアンクの姿、という計算され尽くした物語的構図なんかは、このシリーズの骨子がなんたるかを象徴していて思わずテレビの前で「上手い! ちくしょー!」と地団駄踏みました。
でも、この終盤の展開って、初期の展開の裏返しなんですよ。それ自体が悪いわけではないというか、むしろ上手いと思いますけど、シリーズを進める中で増えていく諸設定が、ほぼストーリーに対しては機能していないという証左ではないでしょうか。
例えば、バース陣営それ自体はとっても魅力的なキャラクターが揃っていると思うし、伊達さんから後藤さんへのバトンタッチ回や、完全復活したカザリにボロボロになりながら立ち向かって活路を切り開く姿なんかには燃え過ぎておしっこ漏らしそうになったけれど、でもメイン(足り得る)のお話に比肩するテーマを背負えず(背負わせず)最後まで「粉飾」の枠を出ないキャラクター達で終わってしまった気が致します。具体的には最後、映司を受け止めるのは比奈ひとりだけの方が感動的だったんじゃないか、とか思っちゃうわけです(まぁ、じゃあ誰が空中で受け止めるんだっつー話ですが……)。
更に言えば、真木博士なんかはそのシリーズ設定の難をモロに食らっていました。真木博士にとって「イレギュラー」となるべき知世子さんというキャラクターが、最終回に至っても結局「賑やかし」以上の役割しか得られず、結果関係性が中途半端になってしまった所為で最後の「知世子さんの元にキヨちゃんを残していく」という画が全然利いてなかったのですね。だから、最後オーズに破れる瞬間も、全然切なさを感じなかったのが惜しかった(その直前のタジャドルへの変身が、失禁級の燃えシークエンスだった所為もあり。アンクの声で変身は反則だぜ……)。
真木博士と知世子さんの関係をただ「似ているから」ということと真木博士の過去と現在の目的の説明だけで片付けず、もう一歩、あともう一歩の発展があったら、ドラクエでいうところのデスピサロみたいな存在になれたんじゃないかなぁ、と思わずにはいられません。それは、伊達さんとの関係にも言えることですが。
そんなわけで、「粉飾」部分の描き込みに大いに不満は残るものの、それでもしっかりと主人公三人を描き、最後はしっかりアンクを死なせた上で感謝の言葉を言わせ、映司の笑顔で終わらせた最終回を含めた終盤の展開は脱帽の面白さでした。一年間、お疲れ様でした! 冬の映画はどう展開させるのか楽しみ。安全に「アンク復活編」とするのか、それとも「アンクのいなくなった世界で」という展開になるのか……個人的には後者が好みです。
……にしても、やっぱり「アンクが自分自身のメダルを投げてオーズを変身させる」という展開は、やはり最終回で、しかもアンクがああいう状態だからこそ映える展開だとなぁ。つくづく夏の劇場版は隅から隅まで蛇足であったなぁ。