「仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル」

 公開間もないので、ネタバレに配慮しつつ。

 とにかく雑な映画だったなぁ、という感が強い。特にシナリオ的に。でも、この雑さって、多分例年の平成ライダー映画からしたらフツーなんですよ、多分。「レッツゴー仮面ライダー」も大概だったし。去年の大傑作「運命のガイアメモリ」を経てしまったが故の悲劇というか……。

 真っ先に雑だなぁ、と思ったのは時系列設定。メイン三人(映司、比奈、アンク)の関係性が、テレビでは既に様々な積み重ねを経て大きな変化を迎えているのに、この映画ではテレビでとっくに通り過ぎた問題(アンクと兄問題)を話の主軸に据えてしまったがために、それだけで醒める。「それ、もう観たよ!」という。

 しかも、テレビが選択した割とシビアな展開に対して、この映画が選択する展開はただ甘いだけで何の解決にもなっていないというもの。それ、ダメじゃん。「フィリップ」というキャラクター性を軸に話を作っていた「運命のガイアメモリ」とは対照的。

 だってさ、この映画観に来る人って、多分九割方テレビシリーズも観てる人ですよね? なのにこういう作りにするっていうのは、マーケティング的にもマズイ気がするんですけど。

 こんな「こんなんでよかんべ」な感じにするんだったら、昔みたいな完全パラレルにするか、本当に「ビギンズ」とか「ザ・ファースト・オーズ」とか銘打って 800 年前の話やった方がよかったんじゃないの、と思うけどなぁ。

 主軸がそんな感じなので、映画で添えられた要素は雑の上塗りでしかなく、特にゲスト子役と大ボスの「家族」の話なんか、陳腐すぎてどうでもいい。だって、映司にとって「家族」というもの、引いては「人を守る」ということが、彼にとってどれだけの悲劇であるかを、テレビシリーズで僕らは知ってるもの。安いよ、今更。

 そんでこの大ボスなんだけど、最後まで観ても目的がイマイチ分からないのも問題。「世界を終わらせる」っていうけど、どう見てもそのエリア以外に影響無さそうなんですけど。最初ドイツが日本に転移してきた理由もよく分からんし。

 大ボスの目的にハッキリしたビジョンが見えないせいで、オーズ達が「何を防ごうとしているのか」が物語の推進力足り得なくなってしまってるし、ようやく「母親を助ける」という目的ができたと思ったら、その母親の体を平気で斬りまくるし。何、ドラマを作る気無しか?

 そんで、映画新フォームの恐ろしく雑な登場。え、最初の社長の「伝説のメダルを云々」って話は何だったの? 結局、大ボスは一枚も自分ではコア持って無いじゃん。何しててん、今まで。

 で、謎のゲスト出演の「暴れん坊将軍」こと徳川吉宗なんか、本当に出ただけ。吉宗出すなら、隠密やらめ組やらじぃやら出さなきゃダメだろ! そんで本格的に「江戸時代に迷い込んだオーズ一行と共闘する吉宗一行」やんなきゃダメじゃん! むしろ大ボスに捕まるのが吉宗でもいいぐらいだよ。結局、「キワモノ出すから扱いもキワモノでいいよね」という、作り手の反吐が出るほどの甘えしか感じないよ。折角のカッコイイ殺陣も、何らドラマに奉仕しないから虚しいだけ。

 キャラクターの配置だけでも上記以外にも大量に雑なところがあるのに、更に話の展開そのものも恐ろしく雑。その中で一番雑で腹さえ立ったのはアンクの扱い。

 ある場面で窮地に追い込まれた映司に、アンクが文字通り決死の決断をするのですが、恐ろしいことにこの決断、何のリスクも感じさせずに終わるんですよ。しかも、その後しょーもないギャグで帳消しにされるという、「カタルシス? ナニソレ?」な展開。

 正気ですか?

と思いました。

 売りの 3D に関しても、別に「おおっ」と感じるカットも無く、むしろあるカットで画面の前面に無理矢理に木材を合成して奥行きを作るという気持ち悪いカットがあって、「そこまでする必要あんのかよ……」と呆れすら感じました。

 CG全開のラストバトルも、ただゴチャゴチャしてるだけだし、「運命のガイアメモリ」のような涙さえ流れるほどの「クライマックス」が、どこにも存在しない。

 「レッツゴー仮面ライダー」に引き続き、「そっか、平成ライダーってこんなもんだったよな」と、諦観を感じる映画でした。残念です。何で、テレビと同じ人が書いててこんなことになるんだろう……?