バカルディライブ「なまたまごかけ御飯」

なまたまごかけ御飯


 迂闊。何が迂闊って、ちょっと感動してしまったから。ラーメンズだとかならまだ分かるのに、まさかバカルディ(現・さまぁ〜ず)に感動させられるとは思わなんだ。しかもその感動は、「すげぇもん観た!」と言うような感動ではなくて、純粋に、「物語」に感動したからタチが悪いのです。

 このビデオは、芝居です。男二人の一時の友情と、ひとりの男の幸せへの道を丁寧に描いた芝居です。男の友情ものに弱い僕は、まんまとそこにハマってしまいました。三村は生来の「人の良さ」が全開だし、大竹は大竹で「相方想い」なとこが全開。そんな芝居の中に在る友情のリアルさ具合に、わなわなと感動してしまった次第です。

 二時間近く、一本のストーリーが展開する構成になっています。ザ・プラン9の「サークルS」に近い感じですね。その作りは色んな伏線が!とか、色々な意味が!とか、そういう細かさではない、人の感情の描き方を非常に重きを置いた、感情を細かく且つ素直に描いている実に“人の良い”ドラマです。故に、観ている間の感覚、観た後の感覚、共にとても心地よくて、ちょっとした幸せな気分になれるのです。

 勿論バカルディですから、「コント」の部分も忘れておらず、基本としてボケの大竹、ツッコミの三村という役割はちゃんとあります。三村のツッコミは、まだちゃんとしたツッコミで、今のような「驚き」だけとか、単語だけとかいうツッコミは無し。大竹のボケは相変わらず意味分かんない感じのが多くて、「ああ、このコンビは年季入ってんだなぁ」ということが、否が応にも分かります。それに、三村がものすっごいスリム。

 でも、このビデオに於ける役割分担はそれだけに収まっていなくて、時に大竹はツッコミに回ります。しかし、そのツッコミは“ボケ”としてツッコむのではなく、三村に“人として”ツッコんであげるのです。例えば、ラストシーン近く、自分勝手な理想に自分で振り回される三村に、大竹は静かに「それはお前の勝手な理想だろう」と諭します。その言い方が、とても優しさに溢れていて、しかもラストシーン近く、二人の友情の結束具合に涙涙(心で)。

 それ以外にも、大竹の数々の気遣いがあり、その気遣いが、ラストシーンで全て結実していく様は本当に見事としか言いようがないです。そして、結果として三村に訪れるのは……一瞬、バカルディのライブだということを忘れるくらい、ラストシーンはとても良いシーンでした。勿論、そこはバカルディ、ちゃんと“笑い”も忘れずに、しっかりオチも入れてくれます。

 素晴らしい芝居でありながら、そちらにばかり振れることなく、ちゃんと“笑い”を入れつつ、ストーリーを完遂した、本当に本当に素晴らしい舞台でした。万人にお勧め出来る、とても良いビデオでありました。いやぁ、いいもの観た。確かに“名作”です。