「牙狼〈GARO〉」

 「孤独な心に付け込むホラー」に付け込まれた人間をきっかけに、順調に見えた白コートとヒロインの関係に亀裂が……という構成。

 「ホラーに付け込まれた人間」の描写は、ひたすら薄かった。何の意外性も、何の深みも無い、書き割りのようなキャラクターでガッカリです。まぁ、クズでゲスな人間の役だからそれでいいのかも知れないけれど、役者の演技の微妙さもあって(特に発狂の演技が酷い)ちょっと残念な出来上がりでした。この間の板尾なんか最高だったのに……って結局役者の問題?

 白コートとヒロインの話の方も、亀裂のきっかけが話が終わるまで待ってたホラーの首というかなり間抜けな演出(どんだけ親切なホラーだよ)と、ヒロインの泣く芝居の間が気持ち悪いのとで、演出側の意図ほどは盛り上がりませんでした。例えば、白コートがホラーの首を飛ばす寸前にヒロインが餌であることを告発して、それに逆上した白コートが首を刎ねる……とかだったら、まだスムーズだったのに。または、ホラーから聞かされてた人間が「俺とお前、どれほどの違いがあるって言うんだ」的に詰め寄る、とか。

 白コートが先週、ヒロインへの想いを告白し、今週は冒頭でヒロインも距離を近付けた……という前振りが効いていただけに、この間抜けぶりは大変大変勿体なかったです。つーか、ホントおかしいと思わなかったのかね。考えてみればおかしいでしょ、「話を待ってる生首」って。 4 コマ漫画劇場か。

 あと、「人間を守るヒーローは、殺人者である人間も守るべきか?」というのはヒーロー番組では割と普遍的なテーマで、色んなヒーロー番組がそれぞれの答えを出してきたと思いますけれど、今回のヒロインの「誰でも罪を背負って生きている」という答えはその中でも最低の部類に入りますね。いくらなんでも、「人が背負っていく罪」と「無差別殺人」を同列に考えるのはアウトだろう。何でもキレイにまとめればいいってもんではない。これで一気に醒めてしまいました。無難なところでは、「ホラーの罪は魔戒騎士が裁く、人の罪は人が裁く」辺り? とにかく、下手すれば「殺人容認」ぐらいまで拡大解釈できちゃうので、これは完全に「ナシ」です。

 どうも最近、「牙狼」は演出がぎこちないというか、どこかズレてる感じがしてもどかしい。先週みたいな地味な話だったらともかく、こういうドラマチックな展開になると、プライドがあるのか何なのかわざと定石を外してくるのだけど、それがまた大して上手くないので、観ててちょっとツライです。無理にいじくっていびつな形にするのなら、真剣に王道を作って貰った方が何百倍も有り難いのですが。

 来週は、予告の段階ではとてつもなく面白そうだったのですが、果たしてどうなるでしょうか。とにかく、「丁寧に描く」ということに力を入れて欲しいところ。