「M-1グランプリ2006」

 はい、今年も完全に乗り遅れまくりで感想を述べます。なんかすいません。

予選

  • POISON GIRL BAND
    • 「服選び」(仮題)
    • 速っ! テンポ速っ!
    • あまりにポンポン掛け合いしてたのでちょっとびっくり。去年と同じ事書きますけど、このコンビは阿部がボケる度に「……何言ってんのコイツ……」みたいな一間があって、それでも尚、吉田が「そうだよね」と話合わせていく、その妙な空気が味だと思うんだけどなぁ。
    • いや、笑ったことは笑ったんですけど、こういうジワジワつっつく感じのって、テンポ速くしたら逆効果な気がすんだよなー。「ジワジワ」なんだから。一発でガシッと掴んじゃうぜ! みたいなタイプじゃないんだし。
    • そのテンポで来て、最後の最後の「マグロ」の下りでカカカッ! っとテンポが速くなる、って感じの方が、振り幅でもっとガッと来た気がしないでもないです。
    • その上、「M-1」の「 1 番手」と、このコンビに全く向かないシチュエーションが重なっていて、なんかちょっと気の毒でした。この結果にめげず、我が道を極めて欲しいところ。極めたところで、M-1 優勝はまず無理だと思う(向き不向きの意味で)けれど、それでも。
    • 「俺、靴要らね」
  • フットボールアワー
    • フットボールアワー戦隊」(仮題)
    • 色んなネタ番組で観たネタではあるけれど、そのときよりいっぱいアレンジがかかってた。僕が観たときは、もうちょっと「後藤店長」のくだりが長かった気がします。
    • なんか難しいんだよなー。スタイルというか芸風が確立されすぎちゃってて、なんかもう競い競わないの外に行っちゃってるような気がするんですよ。変な言い方すると、フットボールアワーの時間だけ舞台が M-1 であることを忘れかけた。「観たことある顔が」「観たことあるネタを」「安定してやってる」から。良い悪いじゃなくて、事実としてそういう印象を受けました。
    • 「王者の風格」とかじゃなくて、既に「ベテラン」。演芸番組の常連、みたいな。
    • だからネタそのものも、こっちがイメージしている「フットボールアワー」そのもので、ビックリするぐらい特に感想が無いです。出演ラインナップに「横山ホットブラザーズ」ってあったら、「きっと『お前はアホか』ってやるんだろうなぁ」と期待してたら、ホントにやった、みたいな(分かり難い)
    • それはそれで素晴らしいことなんですけど、「じゃあ何で出たの?」という疑問がどうにも晴れず。新しい挑戦をするわけでもなく、可能性を感じさせるわけでもなく、「健在!」ということを示したいためにエントリーするなんてロートルみたいなことするにはまだ早いと思うなぁ。
    • 「挙動不審」はマジで恐かった。
    • 「確かにそうかも知れん!」
  • ザ・プラン9
    • 「天使と悪魔」(仮題)
    • プラン9 を観て思うことは毎回一緒。「足し算だなぁ」ということ。
    • というか、前観たときよりよりシステマティックになってて、「そういう道を選んだのかぁ……」と少し残念。具体的に言うと、ボケて、ツッコんで、次の人ボケて、ツッコんで、という流れがもンの凄いキッチリしてた。多分、それぞれの間は殆ど一緒なんじゃないだろうか。
    • だから、「誰がボケるか」という意外性を狙ったような笑いは全く無いし(キッチリ順番にボケるから)、じゃあ人海戦術のボケをかますかと言えば順番に別々のボケをかますので相乗効果のようなものも無し。結局「 1 + 1 + 1 +1 +1 = 5」という、非常に当たり前の結果だけで勝負してる感。
    • それでも笑えるんだから、地力はもの凄いんですけど、やっぱり勿体ないと感じちゃうんだよなぁ。
    • 個人的に、「 5 人漫才」に拘るのは素晴らしいと思うけど、何故「ツッコミ 1 ×ボケ 4 」という構図に拘るのかは正直よく分かんない。折角 5 人居るんだから、時にツッコミが 2 人になったりしたっていいじゃん。全員がボケっぱなしになったっていいじゃん。
    • 演劇畑というか、そういう方面に足突っ込んでると、そういう無茶な構成ってのが許せなかったりするのかなぁ。勿体ないなぁ。単独ライブとかだとそういう匂いのするコントあるのに、漫才になるとどうしてこう、カチッとしちゃうんだろう。
    • 「すいません、今何年ですか?」
  • 麒麟
    • 「ボクシング」(仮題)
    • 麒麟はお前がしっかりせぇ!」って言われたときの、川島の「おまっ……何言うとんねん……」というマジ困惑顔が一番面白かったです。田村は多分、本気で言ったんだろうからタチ悪いよね。
    • 毎年毎年、「のびしろが無い、のびしろが無い」と言われ続けて、それでも意地で伸びちゃうその意地に素直に感動。頑張って欲しいわホントに。
    • ただ、折角この 1 年で田村が色んなとこに引っぱり出されたお陰で、それなりの成長を見せたというのに、結局は川島のナレーション芸で、更に芸歴を重ねていくにつれフツーに上手くなっちゃって「意外性」を削ぎ落としてキレイになっちゃった感がある。
    • 多分、持て余しちゃってんだろうな。田村の成長ってもンの凄いキワモノだから。「ナレーション芸」というフォーマットそのものに「遊び」の部分が無さ過ぎるもんだから、結果自分達の可能性を「見て見ぬ振り」してる感があるなぁ。
    • 要は「挑戦が欲しい!」ってことです。
    • まぁ、バラエティで使う素質と、漫才で使う素質は違うって話なんでしょうな。
    • 「ここで田村が一言!」
  • トータルテンボス
    • 「グルメレポート」(仮題)
    • 強調する部分間違ってる気がしないでもない。
    • あのウソくせー演技って、「元からそういう人っぽい」という匂いがあるからこそ面白味あるんであって、あそこまで強調されると胸焼けするわ。その所為で、醸し出ていた得体の知れない面白味を掻き消してしまった感もある。
    • で、その割にボケがあまりにも小粒なので、これは何の挑戦なのかと聞きたい。ボケが「チャーシューのイントネーション」って凄くないか。それ、地域によってはボケじゃない可能性があるんではないか。
    • トータルテンボスって、「異様に長い手の転校生」とか、訳の分からないシチュエーションを用意しといて、ボケは割と普通だったり、元々「ボケの発想」とかで勝負してるわけじゃないけど、その別の「勝負していたもの」が何かを見失ってしまった。僕が。
    • あと、藤田は年々輪を掛けて「凝ったツッコミをしよう」という意気込みが強くなっていて、今回はそれが結果として字余り且つ小声という訳の分からないところに着地しつつあるので、早く何かに気付いて欲しいと思います。
    • 「かまわんよ」
  • チュートリアル
    • 「冷蔵庫の買い換え」(仮題)
    • 徳井が徐々に徐々に、深く潜っていく感はたまらなく気持ち悪くて最高なんですけど、それに対してずっと表面に居続ける福田がまた面白かった。特にツボだったのは徳井に冷蔵庫のこと聞かれたときの、死ぬほど朴訥な顔で言い放った「うん」。「うん」って。
    • 理不尽にキレられたときの恐怖の無表情とか、一緒に世界に潜ろうとして失敗したとき(というか拒絶)の顔もまたツボ。
    • チュートリアルの演技って、凄く「内から言ってる」感じがするから、もンの凄い特異な世界を表現してても、なんか「ありそうな光景」に見せちゃうから凄い。冷静に文字だけなら、ボケらしいボケが一個もないからね。あるのは「冷蔵庫に異様に食い付く人」と「普通の人」という役割だけ。
    • それを底のそこまで演じることによって、「冷蔵庫に異様に食い付く人」と「普通の人」が会話したとき、想定される内容が正に上演される。それはもう演劇だよね。
    • しかも、話の主導権をツッコミが握って、ボケ側がほぼリアクションをする(しかも、話の流れ的にはさほど不自然でないリアクション)という、形式だけならホントに普通の会話で笑いを取れる自信というのにもまた感服。
    • 気付けば絶賛。それくらい面白かったです。紳助が「そろそろ爆発しそう」って言った途端に爆発する辺りも神懸かり的。
    • 「ポン酢もやろ〜?」
  • 変ホ長調
    • 「セレブ婚したい」(仮題)
    • 初見……と思ってたら、思いっきり観たことあった。どこだっけなぁ……どこで観たんだっけ……全然思い出せん……。
    • 素人っぽい佇まいで、素人っぽい口調で、素人っぽい演技で、素人っぽいことを言う、正に骨の髄まで素人漫才。これ、全部狙いでやってたらもの凄い策士だと思いますけど、多分全部天然なんだろうな。
    • 確かに何度か笑ったし、面白いとも思ったけれど、その「面白さ」って、例えばちょっと気の利いたテキストサイト(古い)読んで感じる面白さと同質のものですよね。そういうものを、わざわざこういう舞台で観たいかというと、正直微妙。
    • 笑ったんですけどね。
    • しかし、この恐ろしいまでの華の無さを観るに付け、森三中とか南海キャンディーズも、やっぱり芸能人なんだな……と当たり前のことを思います。
    • 「お天気、踏み台にしてる人やんなぁ」
  • 笑い飯
    • 「子供に読み聞かせたい物語」「うがいと手洗い」(仮題)
    • 全然関係ないけれど、最近新刊出たばっかだから、どうしても西田を観ると「もやしもん」を思い出します。
    • 松本の言う通り、スロースターターぶりを発揮。そんでもって、前に紳助だかが言っていた「面白いボケの中につまんないボケを平気で挟んでくる」癖も発揮。それが笑い飯らしいつったら笑い飯らしいですけど。「優勝して金欲しいですよー」ってヤラしい笑いを浮かべた後にこの漫才、というコメディの構成としては完璧です。
    • どう見たって二人とも「ボケたい症候群」の患者(なんだそれ)なのに、どうしてあんなに引っ張っちゃうんだろう。ボケたいならボケればいいのに、引っ張って引っ張って引っ張ってどーでもいいボケかましたって、こちらには「これだけ待たしてそれかよ……」っていう残念感、本人達には「ようやくボケられたぜー」っていうスッキリ感しか無い気が……はっ! もしかしてこれが M-1 の「M」!?(馬鹿)
    • 症状を緩和しないで頑張って欲しいです。
    • 「うがらい」
  • ライセンス
    • 「大人向けのドラえもん」(仮題)
    • 演技は上手いんだよなー。前、なんかの映画に二人で出てるの観たときも、周りの役者(それなりにキャリアのある)と混ざってても、さして違和感のない実力を発揮していたし。
    • だからこそ、ボケの物足りなさっぷりが光っちゃうんだよなー。だってさ、「大人向けのドラえもん」っていう演技は素晴らしく出来てるのに、オチが「スタンガンでやっちゃえ」とかですよ。それって、小学生がやたら「うんこ!」とか言うのまで大人版にしちゃった感じですよね。分かり難いか。
    • まぁ、言ってしまえば「大人向けのドラえもん」という題材自体有り触れたものではあるけれど、ライセンスの演技が決まってるだけに、普通にその題材を観るより期待値が上がっちゃうんですよ。だから、オチが来て「あぁ、やっぱり……」という落胆がもの凄い。
    • どうせなら、そんな「オチ」としてのボケに拘らずに、チュートリアルみたく演技力だけで押せる漫才にしたら強いのかも知れませんね。具体的にどういうものかは全く分かりませんけど。
    • 「なーんか今回剛田さんとトラブルだそうで」

最終決勝

  • 麒麟
    • 「田村探検隊」(仮題)
    • 「それは、台詞を噛んだからだ!」って川島は言ってたけど、割合で言ったら川島の方が噛んでたよね。ただ、ナレーション漫才(?)という形式上、そこにツッコめない(ツッコんだところで何の得もない)ということ、そして田村の噛み方がどうしても笑いを誘ってしまうという二点に於いて非常に気の毒でした。
    • 田村の自由度の低さ……というか、「ネタに対する田村の貢献度」が一本目より著しく低下していて、それは結局「川島のナレーションの比重が重くなってる」ということ。ナレーションのパターンが既に頭打ちだということは、3 年前に既に分かり切っていることなのになぁ……。
    • もっと相方に頼ってもいいんだよ?(気持ち悪い)
    • 「スーツ着てる方が違和感あるわ」
  • フットボールアワー
    • 「居酒屋の店員」(仮題)
    • こなしてるなぁ。ひたすら「こなしてるなぁ」という印象。
    • 前このネタ観たときは、「取り皿の方をどうぞー!」でもっと笑った気がするんですけど、何故か今回はスーッ……と抜けてしまいました。何故だろう。より滑舌が悪くなってたから? 後藤のツッコミが作業的過ぎたから? ん〜……。
    • ただ、ひとつ間違い無いのは「ここの店のテーブルは三角か!」「一辺が二人になっちゃうよ」というツッコミを、故意にたどたどしくしてるということ。でも、絶対スパッ! と歯切れ良く言った方が面白いと思うけどなー。そんな風に言って、クスクスウケて、って今更そんなこすい笑い欲しいのか?
    • 「優勝者が再びエントリー」というのは、ある種本人達に取ってもチャンスだったと思うんですけど、結局そのチャンスを「健在」という事実だけを示すだけに留めてしまったのは、非常に勿体ないことだと思います。
    • 「お客様の肉声を肉眼で拝見しまーす!」
  • チュートリアル
    • 「チリンチリンを盗まれた」(仮題)
    • パーフェクトに何の文句もない優勝。う〜ん、立派立派。
    • でも、個人的な好みで言ったら(もの凄く僅差で)一本目の方が好き。何故ならあっちは「冷蔵庫に異様に食いつく人」と普通の人の普通の会話(想定されうる会話)という、そのシチュエーションとしてはリアルではあるけど、元々そのシチュエーション自体がリアルじゃないという倒錯したリアリティ(?)があるのに対して、こちらは「チリンチリンに異様に食いつく人」がひたすらボケてるという、漫才らしい漫才だったから。
    • と言いつつも、「行きずりの女と寝たよ!」を始め、数々のボケは百発百中で、最後の「俺がチリンチリンになる!」とチリンチリン言い出したときは、今大会で初めて笑い泣きした。あれは無い。あれは卑怯。つうか秘境。
    • 徳井は勿論、福田の顔もいちいち面白かった。「女の人なんやと思うてんねん!」って言うときとか、チリンチリンと徳井を鳴らしてるときとかの、基本的には引いてるんだけど、興味だけはちょっとそそられてるという変な表情は特に絶品。
    • 徳井は変態だから(断言)、やろうと思えばもっと凄いシチュエーション出来るんだろうけど、恐らくテレビ的にはこれぐらいがギリギリなんだろうな。その辺のバランスも見事。引ききったら意味ないもんね。
    • 優勝おめでとうございました。今年のご活躍を期待しております。特に徳井は、その変態っぷりを全開にできるようなご活躍を。この間のドラマは酷かったね。
    • 「一旦帰るか?」

その他

  • 司会
    • 眞鍋かをり、落ち着いてんなー。
    • 今田が、細かいところで「ボケたい症候群」を発症していて面白かったです。特に、なだぎ武に「ビバリーヒルズ」を振ったときはホントにびっくりした。でも、多分一番びっくりしたのはなだぎだろうけど。
    • キム兄さりげなさ過ぎるボケをいちいち拾ってあげる今田に、絆を感じました(気持ち悪い)。
  • 審査員
    • 松本も「ボケたい症候群」を多少発症。「お前は氷川きよしか!」「ちゃうわ!!」……「それではズンドコ参りましょう」の流れは笑った。
    • ナンちゃんの、チュートリアルに対する「将来売れます」は、ボケなのか天然なのか相変わらず分からん。「笑う飯」発言以来全く分からん。
    • ラサールが居なくなったお陰で、「すごーく抽象的な論評をする人」( + 普通のことしか言わない人)揃いになってしまっていて、そこら辺はちょっと残念。いや、本人達は「自分たちは分かっているし、自分が思ったことは点数に表れてる」と思っているんだろうからそれはそれで良いんですけど、それでも一人ぐらいは「構成がああなってこうなってるから面白い」とか、そういう解説をしてくれる人が、僕のような馬鹿素人には欲しいな。
  • ゲスト
    • 今年も恐ろしく不必要でしたけど、余計に紹介しなかっただけ去年よりマシか。しかし、何故あんなに生稲晃子を抜いてたんだろう……レッド吉田の影響?(絶対違う)
  • テレビっ子的に
    • 毎年毎年必ず現れる、「今年は低調」とうそぶく人達にウンザリしている私ですが、今年は僕もその一員になりそう。
    • やっぱり、それぞれ「演技が上手い」とか、「ジワジワくる」とか、「つっつく」系の人達が多い所為で、マウントボジションでボッコボコ殴られるようなボケというか、単純に笑い泣きして止まらない! みたいなことがチュートリアルにしか起きなかったから。
    • 芸人達に責任は全く無いし、それがそれぞれの味なんだけれど、そればっかりになってしまうと、やはり「もうひと味欲しいなぁ」と思ってしまうのが人間の欲というもの。来年以降は、もうちょっとイビツなラインナップになっても文句言わない。「 R-1 」のキャプテンボンバーまでははみ出なくていいから。
    • フットボールアワーの出来は残念だったけれど、M-1 を「新たな挑戦の場とする」という考え方は、ちょっと面白いかも。まぁ、即席コンビみたいなのはいっぱい居ますけど、そういうのも含めて、台頭して波乱を巻き起こすのもまた一興。
    • M-1 は身を削り合う真剣勝負の場であって欲しい、という思いもあるけれど、やはり「笑い」の場である以上、「楽しい」要素も欲しいんですよ、僕みたいなユルい人間は。その辺のバランスを上手く取れるような人が現れてくれることを望んでいます。
    • チュートリアルの今後に期待することは、いち早くその変態性を活かしてくれる仲間を見つけること。優秀な(テレビへの)翻訳家付きで。お願いします、業界の皆さん。

 そんな感じで、今年も楽しませて頂きました。ありがとうございました。