「仮面ライダー鎧武」

シリーズも序盤を終えようとしていますが、未だに乗れずにいます。

ダンスチームを描いているのに、全くカッコ良くないダンスシーン。ダンスをカッコよく撮れていない。背景に貼ってある、無神経なほどにダサいポスター、溜まり場の雑な設計、一通りの演技しか付けられていないモブから見える演出の不在感。テキトーすぎる美術のせいで、言葉で散々語られる彼らの拠り所としての「ダンス」に全く説得力が生まれていない。

その他にも、店の隠す気が無いセット感だとか、「鎧武」のプロダクション・デザインは正直、ちょっと酷すぎるように観ていて感じます。お陰で、上記のダンスのことも含め、「沢芽市」という架空の街に全くリアリティを感じません。っていうかまずオープニング映像がカッコ悪い

加えて、脚本の上でも、ありとあらゆるエピソードが既に過去の平成ライダーでやられたことばかりであり、「フルーツでライダー」以上のインパクトを未だに生み出せていないように思います。「モルモットにされる少年少女」にしたって、今週明かされた「闘っていた怪物の正体が実は人間」にしたって、「555」を代表として、僕みたいなキモチワルイ人間は散々観てきて、何ならちょっと嫌気が差してるぐらいの展開です。

……でも、脚本として酷いかと言うと、別にそうは思いません。何となく生きていた葛葉紘汰という人間が、「戦極ドライバー」という力を得たことによって、自分を取り巻く社会と関わっていく……そういう物語としては、時に丁寧すぎるほどの筋運びだとは思います。これがアニメで描かれていたとしたら、それは全く別の印象だったのではないかと思います。

ただ、実写はアニメのようにはいきません。肉体、衣装、群衆、ロケーション、背景、照明。それら全てを、それらをあらゆる現実の物理問題と闘いながら表現に転化し、「世界」を構築するのが実写作品です。全てを「絵」で表現する(少々乱暴な言い方ですが)アニメとはそこが違うわけですが、「鎧武」にはそこの意識がものすごく希薄に感じるわけです。この傾向は「平成ライダー」に関しては前々からある傾向ではあるわけですが(いつも戦闘する場所がさいたまスーパーアリーナ、とか)、明確に「敵」がおらず、登場人物たちがいる「世界」そのものが主役と言っても過言ではない脚本のお陰で、そこの杜撰さが浮き彫りになっているように感じます。

今のところ、「鎧武」の座組は何のケミストリーも生んでいない、単なる失敗しか露呈していません。僕自身は、平成ライダーシリーズが、新しい「血」を取り込んでいくことには大賛成です。特に最近の過去の遺産の食い潰しには憤りを感じているので。だからこそ、今シリーズのようなチャレンジには、絶対に失敗して欲しくないと思ってはいるのですが……。

ホント、お願いしますよ、という感じです。