「ハチワンダイバー」

 残念。悲しい。

 始まった頃から、主役の大振りなだけの味の無い演技、緩急を殆ど付けない煽りっ放しの演出、多用する割にところどころやっすい CG 、どうも有効に感じられないエピソードのアレンジ、全くと言って良いほど有効に作用していないオリジナル要素等々、普通なら初回リタイアでもおかしくない要素の数々に溢れているのにも関わらず、我慢してここまで観続けてきたのは、この「二こ神弟子入り」のエピソードに期待していたからに他なりません。

 なんてたって、原作の海豚七段と二こ神の再戦の件は、ヤングジャンプ心の汗を滝のように流しながら読んだのです。二こ神の無言の涙にグッと来た。二こ神の「それでも将棋はやめられない」に震えた。海豚のプロとしての矜持に鳥肌が立った。それに対する菅田の悔しさを受けて奮起して死闘を演ずる二こ神に号泣した。特に、最後の弟子入りを受ける辺りまでの数ページはページをめくりながらのたうち回って泣いた。菅田も泣いてたけど僕の方が泣いてたね、間違いなく。だから、人に勧めるときも「三巻四巻だけでも読んで!!!」とか言っていたんです。

 この、熱くて、ムサくて、苦しくて、ギチギチで、汚くて、それでもどうしようもなくカッコイイエピソードさえどうにかしてくれれば、今までのことは水に流そうじゃないか、という気持ちで今回の放送を迎えたわけですよ。

 それなのに……。

 海豚七段は安い悪役に成り下がり、プロの矜持の欠片も匂わせず、二こ神は何か単にわーわー騒ぐ人だし、主人公に至っては……。違うだろ!? 「将棋だけはやめられない」ってそんなサラッと言っていい台詞なのか!? 「俺は寝る」ってそんなギャグとして処理するような台詞なのか!? CG でドギャーンバギャーンとやるのはいいけど、ちっとも迫力が伝わって来ないのは何なのよ!? 薄い! 薄い薄い薄い薄い!!!! お前ら何にも分かっとらんわぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!!

 別に原作を忠実に再現してくれ、とは流石に思わないですけど、折角「ハチワンダイバー」という作品を取り上げた以上、商業的ではないところでの「ドラマ化した意味」を感じたいんですよ、こちらとしては。「熱さ」は、ただ単に煽ってカタルシスがあれば良いってことじゃないんだ、ひとつひとつのシーンに、ひとつひとつの台詞に込められるキャラクターの生き様が絡み合って、混ざり合って、爆発して生まれるんだよ! あの大ゴマ多用の効用をもう一度考え直して貰いたい。期待していたものも無ければ、想像してなかったものも無かった個人的に最悪の仕上がりで御座いましたよ。

 斬野戦での「告白勝利」は、もうちょっとマシに演出されてることを祈る。