(新)「Dr.コトー診療所2006」

 いきなり妙な話をしますが、「エンターテイメントって不幸だな」と思うことが時々あります。

 「仮面ライダー響鬼」とかもそうでしたけど、「何気ない日常を描写するだけで十分見応えがある」のに、「テレビドラマ」というエンターテイメントである以上、最終的には「ドラマチックさ」や「クライマックス」の必要性に蝕まれていってしまうことは、(その結果の完成度の関わらず)その作品にとってはやはり「不幸」だなぁ、と思ってしまうわけです。

 それを前シリーズの「コトー」で、それまで島の人々との触れ合いや生と死など色々盛り込みつつも、全ては島の空気に溶け込んでいく優しいドラマが展開されていたのに、クライマックスではコトーのスキャンダルを中心に疑惑、不信、策略などなどがドラマチックに展開され、何かスッキリしない気持ちが残ったものです。別にそれが悪いってわけじゃなくて、それもちゃんと面白いんですけど、やはり……ってのが。

 今シリーズもきっとそうなのかな、と思いながら見始めたらズバリで、「彩佳の乳癌」という要素がドカーンと来た。何度も書きますけど、別にそれが悪いってわけじゃなくて、それはそれで観たくなる要素であることは間違いないんだけど、やはり折角こういうドラマなんだから、前シリーズの中盤辺りまでの、日常を淡々と、優しく描くドラマをまたやってくれないかな……と期待していた身としては、やはり僅かばかりの落胆が御座いました。

 でもホント、話としては、剛洋の入学(あまりにも成長してたので、「あれ? もう大学受験!?」とおかしなこと考えてしまった。子供の成長は早いね……)に関するあれこれだけでも良かったんだよなー。コトーの剛洋へあてた手紙の内容なんて最高じゃないか。

「 Boys be ambitious 」という言葉を知っていますか? そして、そのあとに何が続くか。
少年よ、大志を抱け。お金のためではなく、私欲のためでもなく、名声という空虚な志のためでもなく、人は如何にあるべきか、その道を全うするために、大志を抱け。
と、続くのです。

こういう部分がフューチャーされた「コトー」が観たかったな。

 でも、何度も何度も書くように、だからと言ってつまんないわけじゃないし、相変わらず丁寧な作りだし、光るシーンも沢山ありました。なので、継続視聴決定。幸せな結末があれば良いな。