「マイ★ボス マイ★ヒーロー」(終)

 意外な展開は何にも無かったけど、それだけに実に真摯な最終回で御座いました。

 まぁ、「榊がまた学校に通う」ってのは流石に「ん〜……?」て感じですけども、他の部分は学校にヤクザを連れてきてしまい、学校に迷惑を掛けてしまったことを後悔し、「もう学校には行けない」という事実を心の底から悲しみつつ、鉄仮面先生に感謝する榊、という刑務所までのシーンは、これまでの 9 話の大切さを感じさせてグッと来ました。

 保釈後の展開も、熊田一家に「負け犬の遠吠え」の意味を解説して得意げになったり、いじけて行った場所がゲームセンターだったり、刑務所のときとは別のアプローチでこれまでの榊の経験の積み重ねを象徴していて、笑いつつも丁寧だなぁと感心。特に前者。

 このドラマの良かったところって、学園ドラマながら青春や恋愛やらベタな題材以外にも、「学ぶ喜び」のようなものもしっかり描いたところでは無いかと思います。小学生以下の知識しかなく、頭が絶望的に悪かった榊が、学校での体験を通して色々な言葉や現象の「本当の意味」を学んで感動していく。その過程にとても好感が持てたのです。

 それだけに、途中途中でベタな題材に走りすぎた回があったのは凄く残念ですけど、それでも最終回では「その成果」としての榊を描こうとしていてくれたし、「これから学ぼうとする者」であるカズに「学ぶってなんでしょうね?」と言わせる辺り(多少、唐突な感はありつつも)、作品のテーマに対して最後まで真摯だなぁ、と好感爆発です。

 それに、最終回だからといってシリアスに触れすぎず、刑務所でポジティブに考えすぎて何故か舞台劇調のクラスメートを妄想したり、家に訪ねて来た梅村さんと桜なんとかの前でキレまくったり(何故か突然「ゴッドファーザーのテーマ」を歌い出すのに笑った。それは知ってんのか)、ちゃんと「コメディとしての最終回」を守っていたことにも好感大。

 最後の卒業式シーンは、今まで特に接点の無かった生徒まで最後の挨拶をするために正直間延びした感はありましたが、それでも胴上げしたりじゃれ合ったり「凄く普通の高校生の卒業式後の風景」で、その中に榊が混ざっているという事実は色々と感動的なものでしたし、顔が綻ぶばかり。梅村さんや桜なんとかとのシーンは言わずもがな。

 90 分スペシャルということで、途中間延びしちゃうかなとも思いましたが、その卒業式シーン以外はちゃんと今までの総括をブロック別にしていて、90 分という長さを感じずに終わってくれて、非常に素晴らしい最終回で御座いましたよ。

 惜しむらくは、やはり榊や桜なんとかや梅村さんや星野くん等、個人個人は魅力的に描いてくれたものの、「クラス」や「学校」としての描き方は正直弱かったこと。だから、クラス全員が榊の卒業を願うシーンや、帰ってきた榊をみんなが歓迎するシーンなんかでも、何か唐突というかご都合主義的なものを感じてしまうのは本当に惜しかったです。

 まぁ、30 人近いキャラクター(学校全体だともっと)をちゃんと描いて、「集団」としてもキャラクター付けする、なんてのは異常に難しいのかも知れませんけど、榊達が魅力的だけに、そこら辺も頑張って欲しかったな、なんて思いました。

 でも、この 3 ヶ月、非常に楽しめたドラマであったことは確実。ありがとうございました。