「轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス」

 観てきました。ネタバレ満載要注意。「カブト」の方は後ほど。
 まず、導入部が良かった。突如現れた岩山からのメッセージに呼応するネガティブシンジケートとボウケンジャー、そして……という。なんというワクワク感!! ミューズの声にオーバーラップして次々映っていくネガティブシンジケート、というカット割りがまたワクワク感を増大させて楽しかったです。

 そこに続いての冒頭の「ネガティブシンジケート大集合」の画も燃えたなぁ。テンション上がった。「悪の組織が複数居る」という設定ならではの画。出来ることなら、ボウケンジャーだけでなく、組織同士も入り乱れての乱戦を観たかった気もするけど、あそこはボウケンジャーのアクションによる「オープニング映像」なわけで、そういう意味での出来としてはほぼ完璧でありました。欲を言えば、ちゃんと本筋にも絡んで欲しかったけどね。

 で、その本筋の方はテレビ同様もの凄く単純。レッドの父親が出てくるから、様々な葛藤を経て父親と和解……というなるわけでもなく、ただ単に「父親が今の息子を知る」というような物語。複雑なプロットは何も無くて、ホントにそれだけ。もうちょっと息子の葛藤のようなものを描いて欲しくもあったけれど、そこ詳しく描いたらとても尺に収まらないし、そもそも「戦隊映画」じゃなくなるし……その辺は難しいところ。

 ただ、親父の「愚かな人間の作ったプレシャスなど」という発言の真意が結局明かされることなく終わったり、レッドがその親父の真意に近付くことさえなかったのはちょっとどうかなぁ、という気はしました。やっぱり、何か理由があるからそう思うに至ったんだろうし。

 でも、親子のシーンはなかなか良かったですけどね。自分を足蹴にしていく親父に、「あンの野郎!」って食いついていくレッドや、ミューズ相手に二人がかりでロープアタックする様とか。だからこそ、もうちょっと濃いこの親子のシーンは欲しかったな。

 例えば、内部でひたすら苦労するボウケンジャーと、外側から迫るシルバー、という構成にするんだったら、もうハッキリレッドと親父、ボウケンジャー、シルバーに分けちゃうとかさ。親父がパッと現れてはパッと消えてしまうので、印象としては薄かった。この親父の印象は、キャラの印象じゃなくて役者・倉田さんの印象だしね。

 ミューズ絡みでは、まぁオチは最初から予見できるようなものでしたけども、口述するようにその威容で大体のことは許容できるキャラですっごく楽しめましたよ。この「強い遺伝子を取り込みながら進化する生物」って、下手するとそれだけでひとつ SF ドラマが出来るのに、こんな使い方かよ! と言う意味でも、正統の意味でも。

 アクション的には、去年の「マジレンジャー」での剣劇や、一昨年の「デカレンジャー」でのガンアクションと比べると、これと言った特徴が「ボウケンジャー」には無い分、飛んだり跳ねたりと言ったアクションが大味になってしまって若干食い足りないものがありましたが、その分巨大戦では魅せてくれました。

 最近まで「ワンダと巨像」やってた所為もあるのかも知れないけど、まずラスボスの巨大ヘビというデザインが素敵。更に、「より巨大な生物に乗っかる巨大ロボ」という画!!! 尾っぽに乗ってるのに本体はまだはるか向こう、という巨大感たっぷりの画には、なかなか得難い高揚感がありました。欲を言えば、そんな巨大な生物に、ゴーゴージェットだけで立ち向かったり、飛び交うアルティメットダイボウケンとか、そういう巨大空中戦も観たかったな。

 惜しかったのは、ロボが本体に駆け上がる際のアングルが、ロボの正面だったこと。それは普通、バックショットにして本体に向かって一緒に近付いていくのがセオリーだと思うけどなぁ。その途中で、振り落とされそうになったりしながら(正に「ワンダ」)それでもしがみついて辿り着いた本体に一斉攻撃! という方が燃えたのに。アルティメットダイボウケンが捕まって、ダイタンケンが完成するまでの流れはスピーディで良かっただけに、そこはちょっと惜しかったです。

 ゲストの星井七瀬は頑張ってたんじゃないでしょうか。取り敢えず、一応アイドルなのにあの邪悪な笑顔は評価に値します(偉そう)。ただ、時計盤の上をグルグル回る画だけは果てしなくマヌケでしたけど。何であんなのにしたんだろう……。

 というわけで、何だかんだ言いつつも今年も十分楽しめた戦隊映画で御座いました。