「クロサギ」

 やっぱり山崎努さんは素晴らしいな。山崎さんがニヤァって笑うだけで背筋にゾクッとくるあの感じ。ひゅーひゅー(?)。更に、いつもの飄々とした感じに加えて「殺せばいいと思ってる」など、渋い演技も決めてくれちゃってまぁー最高。

 それだけに、氷柱が「黒崎に関わらないで」と懇願するシーンはもう一工夫欲しかったなぁ……と欲張ってしまいます。原作だと(「原作と違って構わない」と言いつつ、こんな話ばっかしてますが)、氷柱の詰問をひょうひょうと桂木がかわしてはぐらかして段々真相に迫っていく……みたいな構成だったので、初っ端から「君には憎まれたくなかった」とシリアスモードだったのは惜しい。渋かったけどさ。

 というか、そもそも「女の涙で桂木が感傷的になる」という構成そのものがなんか陳腐な感じがすんだよなー。詐欺界のドンがそんなことで心動かされちゃダメだろ、というか。まぁ、堀北真希さん大熱演のお陰で、だからといって悪いシーンだったわけでもないのですけど、もうちょっと「不気味な山崎努」を堪能したい気分です。

 本筋の方は、和泉元禰の壮絶なインチキっぷりと山下くんの演技や演出の仕方もあって開き直ったようにコントだったけど、そうなると逆にちょっと面白かったです。変に真面目にやろうとするからスベるんであって、これくらい開き直ってくれると、変に期待しない……というと語弊がありますが、変に力入れずに観られるというもの。

 ただ、内海佳子師匠関連の話は、オトし方がド下手過ぎると思うなぁ……。だって、あれだけ爺さんの幻出したりしてイメージでの演出しといて、最後は全部黒崎の説明ですよ。更に画面切り替わったらいきなり泣いてる師匠とか、演出も大雑把過ぎるし、この話でそんな情緒のないオチはないだろうよ、と思ってしまうのですが。

 「また遊びにおいで」と言われたときの山下くんの表情は素晴らしかったですけどね。そこから氷柱が桂木に訴えるシーンと、過去の「クロサギ」になろうとしたシーンを絡ませるアイディアまでは素晴らしかったけど、演出面で上手くリンクしなかったのが惜しかったです。変な色気出す前に、そこら辺上手いことやって欲しかった。