「牙狼〈GARO〉」(終)

 結論から言うと、そんなに盛り上がれなかった。以下、覚えてる限りのストーリーの順に感想。

 まずは、白コートとメシア、黒コートと合体神官の同時展開。メシア戦は、もう映像がマヌケの極地で笑っていいのかどうなのか分からなくて大変でした。対巨大戦だったら、この間の「リュウケンドー」の方がよっぽどよく出来てたと思います。

 とにかく、背景となるCGが書き割りみたいなショボさで、メシアも全然威厳が無くて強そうに見えない、加えて直立で飛ぶ(足の裏からジェット噴射)などのマヌケ演出に、白コートも蠅みたいにぶんぶん飛び回るだけでカッコ良さの欠片も無し。正直、「これが最終決戦か……」と思ったら頭痛がしました

 普通、巨大な敵に向かって通常サイズのヒーローが立ち向かう場合、ヒーロー側にカメラを置いてぐわーっと敵に迫っていって「スピード感」と「敵の巨大さ」を同時に演出するもんだと思うのですけど(「リュウケンドー」ではやってた)、ここではなんとずっと引き画。たまにアップになったと思ったら真横からの画で、スピード感も無けりゃCG合成のショボさの所為でメシアの巨大さもどこかマヌケ。正直、僕にはここの演出意図が全く分かりません。

 やられた白コートがヒロインの絵によって強化、メシアを打ち倒す、という流れに至っては完全に脱力。だって、演出的な「タメ」や「ケレン」が一切無い。ビャッと絵を描いてビャッとパワーアップしてチクッと刺してお終いですよ? 何だその流れ作業。

 パワーアップに関しては、先週の伏線もあったし、父親の登場(喋りすぎだしハッキリ出過ぎだと思うが)もあったからその凄まじいご都合主義は百歩譲って許すにしても、あの巨大なメシアが額を数十センチ刺されただけで死ぬってどういうこと? お前ホントに最強のホラーかよ。

 せめて、「ダイの大冒険」の最終回宜しく、頭から真っ二つ! ぐらいの派手さを見せても罰は当たらないだろう。もしこういうのが「リアル」だと思ってるんなら大馬鹿野郎としか言いようがない。だって、人間に変換して考えてみて下さいよ。額を針で数ミリ刺されたってすぐにゃ死なないでしょ。ましてやこいつホラーですよ? しかも最強の。なんでそんな弱いんだよ。

 黒コート戦の方は、折角良い格闘戦だったのに、最後に余計な奴を入れてトドメが不意打ちというイマイチ決まり切らない決着。なんで、アクションに変に見栄えだけカッコ付けようとする癖に、こういうとこカッコ付けられないんですかね。

 フラストレーション溜まりまくりのメシア戦の後は、なんと暗黒騎士復活!! 多分、この最終回でここが一番テンションが上がりました。一番大きいのは「あんなの(メシア)が最後じゃなくて良かった!」という喜び。あの真っ黒いボディがリングから現れたときはホントに震えたね。「ありがとう」とすら思いました。

 ところが、ここでまたひとつ脱力ポイントが。鎧を召喚するために、ザルバが「俺を裂け目に投げ込め!」って言うんですけど、ここで白コート、何の躊躇いもなく投げるの。えーーーっ。そこはお前、「そんなことをしたらお前が無事では済まないだろ!」「そんなこと言ってる場合か!」みたいなやりとりが必要だろう。

 もし、「そんなやりとりをしなくても分かり合ってる仲」だと言うなら、そういう演出をしてくれ。そんな演出もせずに「ザルバ……」とか泣かれても説得力ゼロだ。

 対キバ戦は、どこからともなく飛んでくる黒コートという最大のマヌケを除けば、結構燃えた銭湯でした。相変わらずアクションにスピード感は無かったけど、その分「満身創痍で全身全霊を賭して戦ってる」感じが出ていたから。それに、背景もCGじゃなかったし。

 そして、実物の背景と実物の炎に包まれての最後の変身シーンは最高にカッコ良かったです(天使はちょっとマヌケだったけど)。正に「お前こそヒーローだ!!」って感じ。もう「何で急に強くなったの?」とか言う余地も無い。それだけに、取って付けたような「今までのGAROと……」ってのは余計だったなぁ。知らねぇよって感じ。そこはお前、カッコ良く「俺には友が居る! 守るべき女が居る!」とか言えませんか。

 そんなカッコイイ決着シーンの後に、またまた脱力ポイントが。見間違いだったら申し訳無いけど、駆けつけてくるヒロインが、京本政樹に着せられたドレスから普段着にちゃっかり着替えてるの。おいおい、お前余裕だな。確かにイメージ世界では普段着だったけど、リングから出てきたときはドレスだったのに。何故だ。

 エピローグは、もう何か見本を見て書いたのかと思う程の普通さ。ホントに特に何も無かった。ヒロインが最後のページに何を描いたかを見せないのだけは、とても良い演出だと思いました。というか、見せたら多分またマヌケの上塗りの可能性あるしね……。

 結局、最初から最後まで僕の思う「カッコイイ」と、この番組作ってる側の「カッコイイ」が微妙にズレたまま終わってしまいました。これがピッタリ合った人にはこんな面白い特撮は無かったでしょうけど、僕には手放しに「面白かった!」と言うには憚られる要素がちょっと多すぎました。それも、アクション、ビジュアル、演出全てに於いて。

 そんな感じだから、この番組とこの番組を支持する人たちの「この番組は他の子供向け特撮とは違うんだぜ」という雰囲気が余計に鼻についてしまったのも残念でした。だって、この番組が持つ「大人向け」の指向なんて、「ライダー」と大差ないし、寧ろ変に背伸びしてる分それもまたちょっとマヌケに見えてしまいましたし。

 ただ、確実にひとつ言えることは「日本の特撮のVFX技術は、いくら予算をかけてもまだこの程度」という事実。これは、特撮好きとしては非常に残念な事実です。とても「リアル」とは呼べないCG、ズレっ放しだったり背景から浮きまくりの合成と、朝の特撮よりよっぽど予算を掛けられてるのにこの程度という事実は、ちょっとショックです。

 そんなことも合わせて、最後の方でちょっと続編を匂わせていましたけど、もしホントに続編があるのなら、お願いだからアクション監督とVFX担当は変えてほしいなぁ、と思ってしまいます。面白くて燃えて震えるエピソードも多かったですが、同時につまんなくて醒めて脱力するエピソードも多かった、色んな意味で難しい作品でありました。この作品を踏み台に、また優れた特撮が生まれてくれることをファンとして望みます。