MO'SOME TONEBENDER「TRIGGER HAPPY」

 このバンドは初聴き。そのため、これ以前にどういう音を出していたかどうかとかは知らない。

 一曲目の「trigger happy (in the evening)」の恐いところは、静かな音風景の膜の向こうで、ごっつい魔物のようなものがうごうご動いている印象を受けるところ。結局その魔物は、二曲目「hang song」から六曲目「endless D」まで存分に暴れるのである。

 一聴して印象強いのは、密度の濃ゆい音とグルーヴ。音にとにかく隙間が無くて常に何かがうようよしているような印象。例えるなら、水槽いっぱいに入れすぎたザリガニみたいな(どんな例えだ)。

 グルーヴの方は完全にベースの一人勝ち。とにかくベースが良い音で鳴っていて、楽曲のグルーヴの支柱となっている。特に「hang song」で顕著。そこに、ダンスナンバー風味の四つ打ち打ち込みドラムや、生ドラムにエフェクト処理されたヴォーカルなどが加わって、最強の布陣、といった案配。更に、色んな所に仕掛けてある小細工もよく利いていて、えらい格好いい音となっております。

 ただ、それも六曲目「endless D」迄で、七曲目「VIEW VIEW」から、何故か何の脈略も無く突然落ち着いてしまい、八曲目「rainy」からは日常の音のサンプリングを背景にしたアコギ弾き語り風に早変わりしてしまう。

 それはつまりはもの凄く地味なわけで、さっきまで暴れていた魔物に突然落ち着かれると襲われているこっちが「え?何?」ということになってしまう。その違和感をはねのけるぐらいの出来だったらまだ良いのだけど、正直、単に地味なだけで何にも面白くない。特に面白くないのはインスト曲で、曲の展開がまたえらい地味。どうしろというのか。

 これは、レコードのA面B面の様に、六曲目と七曲目の間に「入れ替える間」があればそんなに苦にもならなかったと思うが、これはCD。一通り聴けてしまうが故に、妙な違和感と六曲目までの未練などを引きずりながら七曲目以降を聴くのは、ちと辛い。

 惜しいアルバムでした。