「花咲くいろは」

 評判が良いからちょっくら観てみるか(他にも細々と理由があったりしますが)、とニコニコ動画の公式配信で観て以来、今のところ一話も見逃さずに鑑賞中。アニメをちゃんと一話から観るのって、なんと「天元突破グレンラガン」以来です。

 基本的に、所謂「日常系アニメ」(っていうのか? ちゃんとジャンル名あったらゴメンナサイ)というものに、どうも食指が動かない性分なのですね。あれだけ話題沸騰大人気の「けいおん!」も、一回観ただけで「やっぱダメだ……」と観なくなってしまったし、その後も色々と観てはみたのですけど、どれもすぐに脱落。

 僕は常に「ドラマ」を観たいと思っているし、「ドラマ」を生むためには絶対に対立や葛藤が必要だと思っています。だから全てが都合よく整理された「日常」というストレスの無いファンタジー世界で繰り広げられるものは、ドラマでも何でもなくただの「おはなし」でしか無い気がするのです。勿論ただの「おはなし」の中での細かなワンカットの演出やキャラクター性を楽しむ、という楽しみ方は全く否定しませんし、当然その作品そのものも否定はしません。

 でも、やはりどうしてもキャラクターも演出も、全ては「ドラマ」に奉仕すべきものだと思っているので、「ドラマ」に奉仕しない要素だけで構成された「おはなし」というのは、どうも僕には座りが悪いのです。要するに「趣味に合わない」ってだけの話です。

 じゃあ何で「花咲くいろは」を観てるのか。それは第一話の主人公と女将の関係性の描き方にちょっと感動したのです。

 主人公の女の子は、やんごとなき理由で祖母(=女将)の経営する旅館で働くことになるわけですが、主人公は最初、「私は○○を自分に課している」だとか「私は○○には○○することにしている」だとか、やたら自分のポリシーやら信念(らしきもの)を、ときにモノローグで、ときに口頭で、しつこいぐらいに述べます。最初この演出を観たときに、「こういう主人公の言動が周りに影響を与えていく話なのかな……?」と思いました。

 ところが、女将は、主人公の信念やらポリシーやらを会うなりいきなりことごとくブッ潰したのです。「そんなことに、何の意味があるんだい?」と。しかも、そのことに対して他の登場キャラクター達が誰一人フォローしない。かわいい絵柄と演出で誤摩化されてはいたけれど、第一話にして主人公の安いプライドが全て粉砕されて「お前なんかただの役立たずでしか無い」と突きつけられる、割とシビアな展開。漫画「バンビーノ!」の初期にも近い感覚。

 勿論、その後主人公は持ち前のキャラクター性で逆転していくし、そもそもこの作品の世界設定も大分ファンタジー入ってる(従業員の少なさ、「経営が苦しい」という台詞の現実味の無さ、そもそものキャラクターデザインetc...)ので実際はそこまで現実的では無いのだけど、ちゃんと「対立」と「葛藤」、そして「対決」まで段階を踏んで、「仕事をする」とは何か? を描こうとした導入部には素直に感心しました。結局、そういう描き方は本当に初期エピソードだけで、その後は登場人物のキャラクター性に依拠したワイワイガヤガヤな「いかにもアニメ的」なエピソードが続いて、「やっぱりこういう方向にいくのか……」とガックリするんですけど。

 で、それでも「いつかはこっち路線に戻るかも知れないし……」と期待を掛けて見続けていたら、先週とうとうそっち路線に回帰。「仕事」に馴染んできた主人公に襲ってきたのは「かつての日常との別離」、言い換えれば「大人になるということ」ですよ!! あぁ、やっぱどこか首の皮一枚で信用出来るアニメだなぁ、と今後の展開を楽しみにしている次第でございますよ。