「侍戦隊シンケンジャー」

 平成ライダーでよく使う後出しジャンケン的な「最初から裏で○○と決めていた伏線」。具体的に言えば「555」で主人公が実はオルフェノク、とか「カブト」で妹が実はワーム、とかそういう奴。「555」でも「カブト」でも、それなりに感心したりなんだりしていましたけども、今回の「シンケンジャー」で繰り出された「後出しジャンケン」に関しては、感心とか驚きというよりも、プロットの暴力だと思いました。

 特に先週、姫レッドが出現した瞬間にあらゆる伏線がぶわーっと頭の中を駆け巡り、頭の整理がつかない内に次回予告でのサブタイトル「影武者」と出す異常なまでの悪趣味には戦慄を覚えましたし、それを経て放送された今週のエピソードに至っては、一年付き合ってきた視聴者の心を先端のまあるい何かぐりぐり、ぐりぐりとされている様なもの凄い不愉快ぶり。

 ド S もいい加減にしろ、と「シンケンジャー」スタッフには言いたいです。

 一年付き合っていたレッドが「実はレッドではない」というただそれだけの事実は、シンケンジャーの面々が感ずるショック以上に我々視聴者、特に僕のような朝っぱらから大声出して熱中しているキモチワルイ大馬鹿野郎に与えるショックは計り知れない。っていうか計り知れなかった(過去形)。

 レッドのあの殺陣の一振り一振りが、見得のひとつひとつが、仲間達(と視聴者)へ向けた顔のひとつひとつが、実は「本当のものではなかった」という引導。じゃあ、我々が今まで観てきたものは、単なるひとりの人間の自己犠牲であったと? シンケンジャー達に土下座をして謝罪した後、当てもなく街をふらつくレッドの姿は、そのまんま君を観てきた僕の姿だ。一体、僕が信じてきたものは何だったのだ? 姫レッドの、初登場にしてレッドに肉薄してしまう(そう、「してしまう」んだな)存在感が、また何ともやり切れない。そりゃブルーもああなるさ。

 ただ、こういうハード極まりない展開に於いて、「じい」という最大の理解者を活かしておいてくれること、そして姫レッドについている方の「じい」を書き割りのような性悪キャラにしてしまうところに、「シンケンジャー」スタッフの最後の良心を感じて、それもまた別の意味で悪趣味です。

 特に後者に関しては、姫側の「じい」も姫レッド同様、「影武者には申し訳ないと思っているからこそ、我々がやらなければならない」という決心を持ったキャラでも全然構わない訳ですよ。というよりも、そっちの方がシンケンジャー達は感情のぶつけ場所を完全に失うので(特にブルー)、より構図としてはハード時代劇っぽくなるわけですよ。

 それでも、ああいう分かり易いキャラに仕立てて、ただ一時のことであっても分かり易い憎まれ役が居ることで僅かに救われてしまうということが、より一層最後のレッドの

「……何も無いより、マシか」

という台詞を哀しくさせていると思う。

 シンケンゴールドと別れて、父の墓の目の前にやってきたときの、フレームインしてくるレッド……というか松坂くんの顔はあまりにも哀しすぎて、ただその顔だけで泣けてしまいそうでありました。

 ここまでえぐった僕の心に、どうオトシマエ付けてくれるのか、ただただ楽しみに待ちます。ここまで「待ち遠しい」という言葉では足りない程待ち遠しいのは久々であります。やっほー!