「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(終)

 ロン vs ゲキレンジャーの殺陣は、この 1 年の集大成として非常に相応しい華麗さ。淀みなく流麗に、しかし決めるところはシッカリと決め、最後はズドン! と一発。ワイヤーアクションも巧みに使い、且つ CG は決め所だけ。ここだけは本当に「 1 年間観続けて良かった!!」と思える瞬間でございました。

 しかし、そのシーンも全体の構成で言えば、結局「この 1 年間頑張ってきた獣拳よりも、一瞬で学び取った臨獣拳の方が使える」という驚愕の事実の証明でしかなく(最後の技まで臨獣拳)、ロンに「何のために出てきたんだか」と言われる始末の七拳聖の惨状、更にラスボスがビリヤードボール化という脱力オチも相まって、最後の最後まで非常にがっかりな仕上がりであったと言わざるを得ません。

 「カンフー戦隊をやるらしい」と聞いたときは、かつて「ダイレンジャー」に幼心を狂わせていた(白虎真剣をプロフィール画像にするぐらい)身として非常にテンションがあがったものだけれど、それから 1 年経過した今のテンションと満足度は、非っっっっ常に低いです。もしかしたらここ数年……否、 10 年ぐらいで一番低いかも知れないぐらい。

 まず、最後までゲキレンジャー達の役割分担が明確にならなかったのが痛かった。ブルーとイエローは最後まで一括りだったし、バイオレットとチョッパーに至っては単なるやられ役。去年の「ボウケンジャー」にしろ、その前の「マジレンジャー」にしろ、全員何かしらの背景があり、対峙するものがあり、戦うべき理由があり、やるべき場面でやることがあったはずなのだけれど、「ゲキレンジャー」メンバーはその場その場のなんとなくの理由に引っ張られるばかりで、口では「日々是精進」とか言ってみても、それをメイン回(それもあからさま過ぎて酷かったけど)以外で発揮することはほぼ皆無。少なくとも、しっかりとドラマに貢献する形で発揮されたことは無かった様に思います。

 加えて、未熟者であるゲキレンジャー達を導くべき立場であるはずのマスター・シャーフーを始めとする拳聖達想像を絶するショボさのお陰で、どんどんゲキレンジャー陣営はレッドのただただ奇天烈なキャラクターばかりが浮き上がる形になり、結果全員レッドの背景のようになってしまいました。

 本当に、どうして拳聖をあんなにショボくしたのか、理解できません。戦いに出向けばすぐ負けるし、元弟子にはナメられっぱなしだし、基本的にいつも吹っ飛ばされているし、最終的には今の弟子からすら戦力外通告を受ける始末。戦えないなら精神面で……と思いきや特に何も貢献しないし。どうして導くべき立場の人間(?)をここまで貶めなければならないの? 彼らは何か悪いことをしたの? そんなに必要ないなら、あんなに豪華な声優揃えなくたっていいじゃんか。サモハン出したって、ジャッキー出したって、あれじゃあ損しか無いだろう。

 対して、行動理念を物語開始当初から確立し、一貫し続けた上、役割分担も明確すぎるぐらいに明確だった臨獣殿陣営は(構成的な意味で)ほぼ完璧。「強さを求める者」としての理央、その献身的パートナーとしてのメレ、師匠として、そして壁としての拳魔、障害物としてのゲキレンジャー。構図だけ観れば、どう考えてもこちらが主人公です。だって、理央が命のやりとりから技を学ぼうとしているのに、レッドは銭湯でヌンチャク覚えたりしてるんだもん。そんなもん、勝負になるわけが無い。というか、ここまでエピソードの熱の入りぐらいが違うのは、どう考えても故意にしか思えないのだけど、何で?

 問題なのは、臨獣殿が主人公っぽいことではなく、ゲキレンジャー側が臨獣殿を超えるものを最後まで提示できなかったということ。多分、制作してる側も気付いていたとは思うけれど、結果取った策が臨獣殿の威光を借りるという最低なものなんだからどうしようもない。結局、この一年間を通して「ゲキレンジャー」は最後まで本当の意味で「ヒーロー」にはなれませんでした。あぁ、本当に残念。

 アクション的な面でも、「カンフ−戦隊」であるにも関わらず、「ダイレンジャー」とは違って CG 花盛りばかりで、血湧き肉踊るアクションはこの一年間で片手で足りるほどしかありませんでした。CG 合成でぴょんぴょん飛ぶより、避けて走って殴って躱して掴んで……みたいなのの方が燃えるし安上がりに思えるんだけどなぁ。

 結局、どの側面から観ても「残念」の一言。そんな一年でした。「勿体ない」とすら思えないのも久々です。来週からの「ゴーオンジャー」は、キャスティングの冒険っぷりに加え主役ロボの落書きみたいなデザインなど、既に不安要素いっぱいなんですが、果たして……。