「仮面ライダー電王」(終)

 「クライマックスは続くよどこまでも」という素晴らしいサブタイトルに恥じない、素晴らしい最終回でありました。求められていることに応えてくれた意味では、殆ど合格点。「平成ライダー」では久しく感じてこなかった満足感で満たされております。

 「カイって結局何だったんだ」「ゼロライナー持ってきたの誰なんだ」「ゼロノスのカード作ってんの誰なんだ」「『いつか未来で』と言うなら今現在に存在してないとおかしくないか」などなど、説明不足……というか、設定盛り込みすぎ過ぎて溢れちゃった感は否めないけれど(本来の時間(=胎児)に近づいているために若返った、というハナのオチはなかなか上手いと思った)、潔く「良太郎とモモタロス達の絆の強さによって開かれる未来」一点に絞った構成があまりにも大正解なので、細かいこと指摘するより、とにかく褒め称えたい気持ちでいっぱいです。

 だってさぁ、「僕と最後まで一緒に戦ってくれる?」と言われたモモタロスに、どんな文句が言えるよ? 「ついでに連れてきた」というもの凄い投げやりな理由だからって、「姫は私がお守りする」と相変わらずの調子で登場するジークのどこをつつける? 今までの道程を振り返るが如く順番に変身しながら決め台詞を決めまくる電王各フォームに何が対抗できるよ? 満を持して登場する「俺、参上!!」に鳥肌を立てずして何をするよ? 全てを代償にして戦い、それでも前を向いて二人で「最初に言っておく!」とキメるゼロノス & デネブに何が抗えるよ? そして文字通り「みんなで力を合わせて」決めた「俺の必殺技ファイナルバージョン」をどう貶せばいいのよ?

 カイの予言通り消えゆくイマジン達、崩れ落ちる良太郎、そして椎茸ご飯をかっこむ侑斗涙腺を塞き止められるのかい? そんで、その様子をこっそり見守りつつ「何故私の名を呼ばんのだ」などとコントを演じるイマジン一同に泣き笑いせずに何をするのよ? あぁ、もういちいち腹立つぐらい最高。みんなカッコイイ。本当にカッコ良かった。単純に「あのアクションが」とかじゃなく、もう「電王」の部品としてそれぞれカッコ良く決めてくれて、「電王」自体が光り輝いていました。

 デザインの圧倒的ショボさ、「電車」等の突飛すぎる設定、悪い意味で先の見えないストーリーなど、最初は本当に不安要素だらけで始まった「電王」だけれど、「史上最弱」という冠とは裏腹に、恐らく「平成ライダー」史上 TOP 3 に入るだろう確固たる意志を持った主人公である良太郎を中心として、やはり確固たる持ち味(役割)を持った“相棒”達のキャラクターによって画面は彩られ、「観ていて楽しい」エピソードが満載。

 加えて決め台詞や古臭い程の「大切なもの」「絆」を根底とした構成は、久しく感じていなかった「憧れていたヒーロー番組」の喜びを再燃させてくれたし、グダグダウジウジしない徹底して明るい作風は「娯楽作品」としての単純な楽しさを復活させてくれましたし、最初は「キックがない」と不満だったアクション面も、イマジン達のキャラクター性を活かすことによって「面白いアクション」に変貌を遂げ、ひたすら楽しい作品になってくれたのは本当に有り難かったです。

 キャラクター造形に心血を注ぎすぎて、全体のストーリー構成がおざなりになっていた感は正直否めない。まぁ、一貫してると言えば一貫してるので、あちこち行ってとっちらかってしまうよりはマシだったけど。「時間」という、非常にデリケートな設定を扱った割に、それをきっちり仕上げようという努力もあまり観られなかった。タイムパラドックス問題は結局あっちこっちに噴出してうるさ方はかなり気になっていたようだし、「時間軸」を気にする割にパラレルワールドが平気であったり、そもそも首領の目的が不明瞭、と“そっち”面での不満は正直多い。

 けれど、僕が子供の頃、何故早起きして「仮面ライダーV3」の再放送を必死で観ていたのか? 「仮面ライダーBLACK」のエンディング映像のカッコ良さに何故痺れていたのか? そういう動機を、具体的には「毎週モモタロス達に会いたい!」と思わせてくれるだけの魅力を放っていた番組だと思いますし、事実僕は最終回が迫るにつれ、言いようのない寂寥というか焦燥というか、そういうものを覚えたし、全てを終えた今、僕は確かに寂しくてなりません。

 特にもう「俺、参上!」は聞けないのだ、という事実が想像を絶するほどに寂しい。それほどまで、毎週「電王」が観られる、という事柄がかなり僕の中で重要な位置を占めていたということなのです。まぁ、「ゲキレンジャー」がホントに全く満足できない仕上がりなので、余計に際立った面もなきにしもあらずですけど。

 あぁ面白かった「電王」。本当に良いキャラクターばかりで、燃えたり楽しかったり騒がしい一年でありました。モモタロスの「またな!」が、どういう形であれ、どこかで実現したら嬉しいですな。