「クロサギ」

 あ〜……そっち行っちゃったかぁ……。

 先週、僕が「カッコイイ」と書いた原作の氷柱告白シーンっていうのは、いつも通りアパートの部屋の前で出会った黒崎と氷柱。黒崎がいつものように嫌味をぶつけると、いつもと違って無表情で全部受け止める氷柱。そして、無表情のまま「私があなたを好きだってことだけは覚えておいて」と伝えて部屋に消える……と、手元に本が無いのでもっと細かくあったかも知れませんが、大体こんな感じ。

 この、サラッとしてるのにズーンと来る感じがやたらカッコ良くて、出来たらこれを堀北真希さんにはやって欲しかったのだけど、これをやるにはどうしても「氷柱が黒崎の詐欺をある程度容認」しないといけないので、やっぱりテレビドラマでは倫理的に無理だったのかな。

 それならしょうがない、とは思うのですけど、いくらなんでも流石に今回の昭和のドラマばりの告白シーンは正直……。黒崎を、アパートの前で優しい表情で待ってる氷柱(というか堀北さん)までは良かったのに、そこから急にどこかの夕焼けの丘まで場面が飛んで(何で大人しく黒崎がついていくの?)、回りくどく説教した後に「あなたが好きなの!」と絶叫。なんかなぁ、カッコ良くもないし、切なさ感じる前にあざとさ感じちゃうし、つかそもそもそんな切ない思いする程君ら絡んでないべ? と「こんな使い方せんでも……」と思わずにいられません。

 そもそも、今回はそういう「あざとい」シーンが盛り沢山で、氷柱が泣いてるところにどこからともなくやってくる子供とか、あんだけダメ人間な親父を最後はちゃんと良い人で落としちゃうとか、メインのシロサギが小物中の小物だった所為もあって、変に人情ドラマに振れちゃったのが非常に残念。振れたら振れたで凝ってくれれば別だけど、ねぇ……。

 どうせなら、親父はダメ人間のまま通してしっかり警察に捕った方が、まだ話の筋がしっかりしたような気がします。そうすれば、氷柱の黒崎への想いにより悲哀が出るし、「氷柱が詐欺を容認できない」という路線もより強く出るでしょうに。人物に次々オリジナルの設定付けるのは結構ですけど、もう少し一話一話大事に構成して欲しいな。

 騙し合いも無い、人情ドラマも平凡、という中で唯一、山崎努さんの飄々とした演技だけは圧巻ですらあります。特に、氷柱を招き入れるシーンとお茶っ葉に感動するシーンは、悪寒すら走る演技でした。この山崎さんが居るからこそ、僕はまだこのドラマをリタイアせずにいられるのです。