「仮面ライダー響鬼」(終)

 取り敢えず、「明日なる夢」というサブタイトルは素晴らしい。

 内容の方は、まぁこうなるよな……という感じ。どうせなら、「クウガ」の最終回のように完全なる後日談になってくれれば良かったんだけど、「魔化魍は絶滅しない」という設定上、そうも行かないからね。良かったんじゃないですか。

 明日夢くんに声掛けづらい響鬼まるで昔の彼女みたい、とか明日夢くんが初期よりヘタレになってる、とかいくら何でも軽くなり過ぎじゃないか明日夢くん、とか転校生の変身が完全に主人公扱いだ、とか響鬼以外の鬼が完全に刺身のツマ以下の扱いだ、「鬼にはなりません」って今更かよ、とかあきらとカブってるけどいいのか、とかそもそもあんな街中で誘拐って、とか人が居るのに必殺技使うなよ、とか「実は他に黒幕が居ました」は上記の設定上良いと思うけど、タイミングってもんがあるだろう、とか他にも色々気になる部分はあるにはあったけれど、最終回だからもうどうにもならんしね。

 「理想的」では無かったけれど、落としどころとしてはこんなもんじゃないでしょうか、というのを示された感じか。特に何があるわけでもない、こういうふわっとした終わり方も「響鬼」らしいと言えばらしいしね。

 1 年振り返ってみると、つくづく色々勿体ない作品であったなぁ、と思う。それはスタッフ入れ替えなんていう些末なことじゃなくて、1 年通して「使えば良いのに使えなかった素材」がゴロゴロ転がってる感じ。「もっと面白くなる可能性」を、ずっと秘めたまま終わってしまったというか。

 でも、最初、響鬼のデザインを観たときに感じたどうしようもない絶望感は、今やすっかり無い。それだけでも、この作品には力があったってことなのかも知れない。それにしても、提供バックぐらい「響鬼」のままにしとけよ。

 次回作の「カブト」は、やっぱりデザインが微妙なのと、折角「響鬼」で本当の意味での「変身」になったのに、再びメカ系の「装着変身」に戻ってしまうのが惜しいのとで、現時点での期待値は正直高くない。映像は映画っぽくて綺麗だったけどね。

 まぁ、「響鬼」も最初はそんなこと言ってたから、どう転ぶかは分からない。けど、次回予告観た時点でハッキリと言えるのは、演技に関しては再び脳内補完が必要ということ。別に今更、「演技の出来る人を使ってくれ」とは言わないけれど、それにしても凄い落差だ。

 あとは、本体更新の方でいつか。

 以下は、完全なる妄想なので畳む。
 個人的にあって欲しかったシーン。

 イブキが「たちばな」を手伝っていると、そこに持田、そしてあきらが訪ねてくる。久しぶりの来店に持田が日菜佳や香須実とテンション高く喜びあっている横で、イブキはあきらに
「久しぶりだね、あきら」
と声を掛ける。にっこり笑って一礼するあきら。

 持田たちが談笑している隣のテーブルで、向かい合って座る元師弟。互いにお茶を一口飲み、先に口を開いたのはあきら。
「お元気そうで何よりです」
にっこり笑って、イブキ。
「オロチを鎮めてからは、香須実さんの手伝いしながらのんびりやってるよ」
「良かったですね、香須実さんの側に居られて」
イブキ笑って
「おいおい、元師匠をからかうなよ」
「すみません」
笑い合う師弟。

 イブキ、微笑になって
「あきらは、何かやりたいこと見つかった?」
じっとかつての師を見つめ、あきら静かに
「今は、福祉関係の道に進みたいと思ってます」
ふっと笑ってイブキ
「そっか。あきららしいな」
「そうですか?」
「ふふ、これでも君の師匠だったんだよ? 分かるさ」
「何でもお見通しですね」
「師匠を侮るなよ」
笑い合う師弟。そして、微笑ながら、真剣な目つきであきらを見据え、イブキ
「頑張れよ、あきら。何かあったら、僕はいつでも力になるから」
そして、ふっと笑って
「師匠だからね。元、だけどさ」
あきらも真剣な顔で、凛々しく
「はい」

 何か思いだしたイブキ、談笑してるテーブルに
「そう言えば、明日夢くんは? 一緒じゃないのかい?」
香須実も同調して「そうだよ、いつも一緒だったのに」と訊くと、持田は尚笑いながら
「安達くん、今頑張ってるんですよ」
そして明日夢くんの病院バイトシーンへ。

 斬鬼さんの墓前。手を合わせている轟鬼

 目を開けて、微笑しながら墓石に語り出す轟鬼
「もう、あれから一年っす斬鬼さん」
「オロチは響鬼さんのお陰で鎮められて、魔化魍は相変わらず出ますけど、前のように頑張ってるっす。響鬼さんは、京介が良い弟子に……あっ、覚えてますか斬鬼さん? あの明日夢くんの友達。なんかもう鬼に変身できるようになって、響鬼さんは俺を超えるかも、なんて言ってるんスよ。俺も負けてらんないッス」
「イブキさんも香須実さんと良い感じなんスよー。端から見ててなんか羨ましいっていうか……」
急に俯いて
「最近、日菜佳さん冷たいんスよねー……あっ、すいませんこんな話じゃなかった! と、と、とにかく、みんな元気っすよ。前みたいに、みんな楽しく……」
表情暗くなって
「……今でも思うんスよ……あのとき俺がしっかりしてれば、今も斬鬼さんは『みんな』の中に居たんじゃないか、って……寂しいっす、斬鬼さん。車の助手席、ずっと空いたまんまなんスよ……」
暫く俯いた後、無理に笑って
「すいません、こんなこと言ってちゃ寝れませんよね。すいません、斬鬼さん」
そこに、日菜佳から電話が。魔化魍の知らせ。
「あ、そこなら近いッス! すぐ向かいます!」
電話を切って、今度はしっかり墓石を見つめて
「行ってきます、斬鬼さん!」あのポーズ。走り去る轟鬼
墓前には、静かに煙りの上がる線香、そして静かに供えられた、斬鬼のギター。

 資料室で資料を開いて裁鬼(人間体)に見せるおやっさん
「う〜ん、多分これだろうねぇ、裁鬼くんの出会った魔化魍
資料を見ながら裁鬼
「石割の言った通りでした」
おやっさん、心配そうに
「いけるかい?」
裁鬼、ニッと笑って
「そろそろ名誉挽回しないといけませんからね」
おやっさん、笑って
「はっはっは、そうだねぇ。ベテランの意地見せてやらないとね」
響鬼やイブキや轟鬼にばっかり任せておけませんからね」
おやっさん、意地悪そうに笑いながら
「そう言えば、ケチの付き始めはそんなこと言って斬鬼くんの穴埋めだったねぇ」
「嫌なこと思い出さないで下さいよ」
罰悪そうに笑う裁鬼
「冗談だよ。頑張ってくれ」
送り出された裁鬼が、階段に足を掛けると、また意地悪そうな笑顔でおやっさん
「鋭鬼くんや弾鬼くんも呼んでおこうか?」
裁鬼、振り向き様、今度は余裕の笑顔で
「呼んでる間に終わります」

 要は、彼らにもフォローが欲しかった、という話。あと、明日夢くんと持田とあきらのゴニョゴニョ話も……。