「侍戦隊シンケンジャー」(終)

 一度敗戦した後の再戦にて。

 レッド以外の 4 人で「縛」のモヂカラを形成しドウコクを足止めし、その隙にレッドが烈火大斬刀の二刀使い(!!)で攻撃、尚も激しく抵抗するドウコクに吹き飛ばされたレッドの影に居たのは、姫レッドの作ったディスクを装備しらブルー! 放たれるブルーの渾身の一撃……。

 この一連のアクションに、僕はこの一年、「シンケンジャー」が培ってきたものの全てを観た。

 だってさぁ、あんな「行け!」「御意!」って感じの「殿」と「その家臣」で始まったシンケンジャーがだよ? 最後の最後、宿敵への最後の一撃を、言葉も交わさず、何の躊躇いも見せず、「殿」であったレッドが一の太刀となり、ある意味「シンケンジャー」のコンセプトを一番に体現していたとも言えるブルーが二の太刀となる……あ、ヤバい、書いてるだけで泣けてきた(バカ)。それは、「シンケンジャー」を名乗る 6 人の戦士達が、真の意味で背中を預け合える「戦隊」となったということなのです。

 「シンケンジャー」が素晴らしかったのは、要するにそういうとこだったと思います。

 どんなにギミックを用意しようが、どんなにサプライズを用意しようが、どんな用意周到なプロットを練ろうが、それ自体は重要じゃない。そこに乗っかるキャラクターが如何に「生きている」かが重要なのです。「生きている」ということは、考えることであり、感じることであり、話すことであり、動くことであり、その積み重ねを「人生」と呼ぶ。

 「シンケンジャー」のキャラクター達は確かに生きていた。変わるところは変わっていったし、変わらないところは、例え何かを犠牲にしてでも変わらないでいた。というか、意志を持って守っていた。

 例えば、グリーンには遂に最後まで、目標とするレッドに肉薄するような場面は用意されなかった。けど、だからと言ってグリーンがただの「戦隊のひとり」に堕したかと言えば決してそうではなく、この一年を生きた結果、「レッドという目標を目指す男」からまた別の存在意義を観ている側に突きつけてくれた。

 当然、それは他のキャラクターにも言えるわけで、だからこそ単なる「恒例行事」に過ぎない「素面での名乗り」が、あんなに感動的に見えるんだ。僕らに「オレ達は、もう一年前の俺たちとは違う!」とビシッと画が教えてくれている。

 例えば、そうやって成長していく面々を、じいこと彦馬さんはただひたすらに愛していた。だからこそ、第一話から変わらずに叫び続けている「殿ぉーーー!」の叫びが、最終話でさえこんなに胸に響くのだ。

 何かもう、拾っていったらキリが無いけど、どんな言葉で表現したらいいか僕の語彙では分からない数々のこと。「スーパー戦隊」という枠で、ここまで「若者達の成長」の中でそういうものを感じさせてくれた作品は無かったし、そんな領域に至るまで真摯にキャラクター達に寄り添って一年間描ききったのには、もうただただ「お見事!」と言う他無いです。

 1 コンセプトで突っ走るという意味では「ボウケンジャー」もそうだったけど、基本的にギミックの愉しさにコンセプトが反映された「ボウケンジャー」に対して、「シンケンジャー」は「侍」というコンセプトを時折滑稽に見えるぐらい人間ドラマに反映させることで、結果普遍的な若者の成長譚として結実したことは、結構凄いことなんじゃないでしょうか。設定が結局「大枠」にしかなっていなかった「ゲキレンジャー」や「ゴーオンジャー」、そしてコンセプトそれ自体しか存在せず、それ以外のものを全て捨て去ってしまった最凶最悪の例である「ディケイド」を経た今だからこそ、「シンケンジャー」の持つ、「普遍的だからこその凄み」を強く感じます。

 アクション的にも、この間の「レッド vs 十臓」を持ち出すまでもなく、ドラマとコンセプトを上手く反映した型で、僕が殺陣好きだということを差し引いても毎週手に汗握るハズレ無し。個人的なベストは「二刀流レッド vs 十臓 vs 外道衆」の三つ巴戦。「カンフー」という設定ばかり先行して、画が結局最後までキマり切らなかった「ゲキレンジャー」の反省も上手く活かして……かは知りませんが、とにかく気合い入ってました。眼福。

 欲を言えば、「最後の一体になっても突っ込む」とまで言ったんだから、シンケンオーには半壊ぐらいはして欲しかったな。「ただただ、この一太刀を!」というのを、もう少し画で見せて欲しかった。そこまで行ってこそ、ドウコクの最後の台詞も効いた気もするし。ただまぁ、ブルーの一撃と、「一緒に戦えて良かった」って台詞で、既に物語的な決着は付いているから、そういうことは余計な気もするけど。

 ラストカットは、「いつもの様に玄関を掃除している黒子達」だった。 7 人目のシンケンジャーであった黒子達の日常が描かれることで、シンケンジャー達に「侍ではない日常」が始まるのだ、と暗示され、作り手達の愛と優しさを感じてまた泣けた。人生は、続くのだ!

 何はともあれ、間違いなくこの 10 年を代表する傑作でした。ありがとうございました!

 「ゴセイジャー」は、取り敢えず予告でのレッドが思いっきり女走りだったのでちょー不安です!