「ザ・ドリームマッチ '05」

 結論から言いまして、面白かったです。各位、ごめんなさい(公約)。

 取り敢えず見終わってまず思うことは、番組コンセプトが一切守られてなかったということ。「真剣勝負」なんてもんじゃなかったし、ましてや「史上空前」でも何でもありませんでした。

 それでもこの番組が面白かった……というか、ちゃんとバラエティ番組として成立したのは、紛れもなく芸人の力という奴で、本当に二時間半、僕はダウンタウン始め、この 9 組のコンビを見直しっぱなしでした。番組自体の作りはホントにマズいとこだらけで、予想通りどーしようもない感じだったのです。

 例えば、無駄に豪華なセットとか、謎過ぎる審査員の芸人毎に付けられている正にしょーもないキャッチフレーズ付けたり、中途半端なドキュメントを登場前に流したり、流れは寸断するわともう散々なもの。そもそも、「ネタ作り」の期間があれだけ多忙の芸人捕まえて「一ヶ月」というのもふざけてる。危惧していた「芸人なんだからやれよ」的なやらせる側の高慢な雰囲気は最後まで抜けきらなかった。でも、そこを突破したのが芸人達。芸人達の作ったネタ、ダウンタウンが振るトークが、単体で番組を成立させる奇跡を観ました。

 それが一番顕著だったのが、大トリとなった有田・遠藤コンビ。このコンビはドキュメント映像が「大トリのプレッシャーに押し潰されそうです」と言うような主旨で流されていたわけです。それだけ思い悩んでいる風に見せておいて、蓋を開けてみたら怪獣とヒーローのダダスベリコント

 つまり、こいつらはドキュメント映像(と言うより自分達の過程)を全部前振りにして、コントそのものを「オチ」としたわけです。コント自体はダダスベリでしたが、構成としては完璧。妙ちきりんな番組の構成を完全に自分達で取り込んでいました。終わった後のトークでも「金あるんなら使ってやれと思ってました」「最終的に 7 組になっててもいいです」と開き直っており、更にそこをダウンタウンに拾って広げて貰い、理想的な流れを形成していました。素晴らしい。

 ここ以外でも、主にトーク部分での振り→オチの流れが素晴らしく、この番組自体がしょーもないが故に浮き出てきたこの芸人達の「真の実力」というものにうっすら感動さえいたしました。いやぁ、凄かった。ここをもっと楽しむためにも、本当に「真剣勝負」だとか妙な前振りだとかは、ほんと〜〜〜〜〜〜〜に要らなかったなぁ、と惜しい思いをするばかりです。

 ただ、ひとつ引っかかるのは、何故か中継された打ち上げ会場での松本人志の一言。「次回、ダウンタウンも参加するなら出る」と詰め寄る出川、宮迫に対して松本はこう言います。

「出たいんですけど、来年はM-1に出ようと思ってるんで

 それはシャレになってないから、あんたが言うと。

 以下は、各コンビネタ感想。

  • 宮迫 & 天野
    • 今回唯一の漫才。
    • 基本、宮迫がボケっ放しで天野がつらつらツッコむ形式。雨上がり決死隊のネタって殆ど観たことがないので、宮迫が「漫才」というフォーマットでボケてる、その事実だけで随分新鮮でした。
    • ただ、本当に宮迫一辺倒で、殆ど天野に比重が来なかったのが残念。こういうところに、「ああ、練る時間無かったんだなぁ」と実感させられます。もっと時間やれよ!
    • 浜田も言ってましたが、「まだ続くの!?」という場面が続くのが凄まじかったです。どんだけ詰め込むんだ、という話。
    • で、詰め込んだ挙げ句に使用する天丼の仕方が、何となく若手っぽくて微笑ましかったです。でも、ああいう天丼ってオチで使ったりするのが多い気がするのですが、あちらこちらで乱射してるのが宮迫のキャリア的意地でしょうか。そんなことはないか。
  • 山口 & 上田
    • ぐっさんの紙芝居に上田がツッコむコント。
    • 真っ先にBOOMERを思い出しました。
    • とにかく、余りにも惜しい仕上がり。上田の例えツッコミって、「間」が命だと思うのです。で、その間ってのは「掛け合い」の中にこそ生まれるものだと思っています。
    • なので、紙芝居ネタだと「ボケる」「ツッコむ」の「掛け合い」の中に「絵を見せる」という作業が入ることで、どうしても掛け合いとしての「間」も、「認識」としての間もどうしてもほんの僅かだけズレるような気がするのです。
    • 故に、例えばBOOMERのようなツッコミだったらともかく、上田の様なツッコミになってしまうと、そこのズレのせいでどうしても「間延び」した印象を持ってしまうのです。どっちにしろ、ツッコんでる間はボケは待つわけですから。
    • その上田のツッコミ自体も、まだまだ本調子じゃない感じはしたし、本当に色んな面で上田が活き切れてない感じがして大変に惜しかったです。
    • 面白かったですけどね。「もっと出来るでしょ?」という期待感が拭い切れません。
    • 浜田が「色んな例え出てくるなぁ」と言ったのが一番笑いました。
  • ゴリ & 亮
    • プロレスラーのデートコント。
    • この設定出した時点で勝ちです。プロレス技で繋ぐなんて、十八番じゃん。
    • ただ、手を繋ごうとして腕をひねる、という天丼の二発目のとき、フリが不十分だったために、観客が「また?」と若干静まっていたところに「天丼」って難しいなぁ、と思いました。すぐさまゴリが修正して、三発目ではしっかり振って笑い取ってましたけど。
    • 亮が意外と動けることに感動。亮にあまり喋らせないという選択は大正解(それでも噛んでましたが)ですが、ここは意外にゴリも嬉しい誤算だったんじゃなかろか。
    • でも、一番笑ったのは亮の「群衆の背中!」という台詞だったりします。
  • 田中 & 三村
    • 彼女を待つ三村のところに、田中が訪問して体験した事件を話すコント。
    • 三村ってすげーなぁ。と、三村にひたすら感心するコントでした。ひとりであれだけコントの磁場を変える力が凄まじい。「C!A!」とか言われたら、笑うしか無いだろう。
    • 多分、ネタを書いた田中の意図としては、三村のツッコミは「書いても覚えないから無駄だ」ってことで殆どフリーにしたんだと思います。それが凄まじい破壊力になってました。「力技」という言葉がピッタリ。
    • それを目の前で観ても、キャラを通す田中も凄い。その上途中、アドリブで三村に逆襲してるのも良い。そこを更に返す三村も良い。
    • 特に後半部は、大変グルーヴィーでした。
    • 田中の意味無いヅラは散々ツッコまれてましたが、同じ様なことする人間を二人ほど知ってるのでその気持ちはよく分かる。特に今回の審査委員長さんなんかは、ヅラ被らないとコント出来ない人だよ?
    • 優勝おめでとさん。
  • 淳 & 出川
    • 縛られてる警察官のところに道を訊きにやってきた男が……というコント。
    • もう、全ての意図が分からない。
    • まず、出川をあれだけ「ボケだボケだ」と責めておいて、蓋を開けてみたらツッコミ兼ボケと、大変多くの仕事を押しつけているのがよく分からない。
    • そして、その出川より淳の方が緊張して台詞トバしたりしてるのもまた分からない。
    • 何より、何で出川と組んで、しかもこんな番組で最後に死ぬシュールコントにしたのかが最大の謎。千原兄弟の某コント思い出しちゃったよ。
    • このオチに対して、「えーーーーっ!」と観客がブーイング入れる辺りに、この番組が如何に「真剣勝負」じゃないか、を物語っております。
    • でも、何だかんだ言って、出川は元役者(今も?)だけあって声量は凄まじいですよね。まぁ、演技にはやっぱり向かないと思いますが。
    • 「ハズレ」を引かされた淳のヤケクソ、と取ることも出来ますが、意外と上手く言って内心「棚からぼた餅」気分じゃなかろか。
  • 大竹 & 蛍原
    • ドアの壊れた蛍原のところに、修理屋・大竹が来るコント。
    • 完全にさまぁ〜ずのネタのリボーン。そういう意味では、全組中、一番卑怯なコンビです。
    • なので、蛍原のツッコミは確かに正確だったし「蛍が光ってた」と言われるようにハズしてなかったのですけど、ネタのフォーマットがさまぁ〜ず向きなので、三村のツッコミでないと、何か足りない感じがしてしまいます。
    • 大竹のボケは基本低温なので、そこに三村の高温ツッコミを入れることでの一瞬にしての温度上昇が面白かったりするんですが、蛍原のツッコミが同じく低温気味なため、どうしても「物足りない」印象が出てきてしまいました。
    • 一番惜しかったのは大竹が逆ギレするパートで、三村だったらそこを更に前のめりでツッコむのを、蛍原は引いてツッコむんですよね。そこに悪い意味での温度差が出てしまって残念でした。
    • 面白かったのですが、正直松本人志の苦笑いの印象が強いです。あんなボケ、好きそうじゃないものな。
    • トークのときの「三村の状態は分かる」という話に、さまぁ〜ずの絆を見た。
  • ウド & 川田
    • 銀行強盗へ向かう二人のコント。
    • 真っ先に思い出したのは、NO PLANのDVDに入っているレッド吉田と品川庄司・庄司のコンビネタ。やはり、天然が二人揃うとこういうネタになるんでしょうか。
    • 「楽しくコントやってます!」というのを体全体で良くも悪くも表現してるウドと、完全にキャラになり切ってる川田との対比が面白かったです。同じボケなのに、味が全く違う。別の言い方すれば、ウドが強烈すぎるのですけど。あれを飼い慣らしている天野はつくづく凄いと思います。
    • ネタ自体はイマイチでも、ウドが本当に力ずくで持っていくんだから、ある意味で得しているコンビでした。
    • 僕らは、ウド鈴木という男の神髄を、まだ知らないのかも知れない……(無意味にホラー映画風)。
  • 有田 & 遠藤
    • 街にやってきた怪獣に、ヒーローが会いに来るコント。
    • 上ではダダスベリと書きましたが、個人的にはちょっと好きだったりします。まず、怪獣の着ぐるみ着てダルそう〜に立ってる遠藤の画が良い。有田には、たまにアンタッチャブル・山崎の影を見ました。
    • 途中からメロドラマに突入するという、ヤケクソに豪華絢爛な無駄さも加わってなんかもうこれほどまでに捨てられると気持ち良いや!という具合。
    • 大トリというより大オチでした。

 全体的な面白さで言ったら、NO PLANのDVDに入ってるシャッフルコントの方がよっぽど練ってあったし、面白い気がします。やはり、全体的に「時間が足りない」という印象がもの凄く強い。もっと時間さえあれば、もっと別のが……とか、もっと面白く……という感じがありありとあって、大変勿体なかったです。

 来年もあるかどうかは知りませんが(個人的にはもう二度とごめんですが)、もしやるんだったらその辺のことをちゃんと考えて、ついでに番組構成もどうにかして欲しいところです。