宇多田ヒカル「First Love」

今はお綺麗になられましたね


 もう 4 年も前の話。

 当時、今の数十倍B'z狂だった僕にとって、B'zのベスト 2 枚の日本記録セールスというのはB'zを狂信する理由のひとつになり得ていたわけで、それを見事にうち砕いてくれた宇多田さんのこのアルバムには正直、憎悪さえ抱いたものでした。

 でも、憎悪するだけじゃアレなので、そんだけ売れるアルバムってのは一体どんなもんじゃいと買ってみたのが大体 4 年前。当時の感想は「よく分からない」。松本孝弘のギターと稲葉浩志のヴォーカルが音楽の全てだった当時の僕には、ちっとも良く聴こえなかったのです。

 で、改めて聴いてみた今日、「宇多田ヒカルって頭良いなぁー」と今更ながらそういうところで感心してしまった次第です。

 このアルバムが出たとき、本人 15、6 歳。今巷で大流行の所謂「青春パンク」の皆さんよりもずーっと若い。なのに、このアルバムでは一切、夢がどうこう、青春がどうこう、自分探しがどうこう、だとかそういう臭いが無い。

 タイトルチューンも、「First Love」なんていうヤバそうなタイトルにも関わらず、実際の内容はあくまで客観的で、具体的なことよりも心象風景や、距離の機微などを表現しようとしていて、普通にクォリティーの高い楽曲だと思います。歌い方にも色々な工夫をしようとしていて(勿論、まだまだ未熟ではあるのですが)、本人が「表現をする」ということに対して、結構深く考えているのだな、というのが伺えます。

 それが、アルバム全体としての楽曲のバリエーションの多さも手伝っていて、宇多田ヒカルさんが非常に才能のあるミュージシャンであると言うことを知らしめるには、充分すぎるデビューアルバムだったと思います。やっぱり凄いよ宇多田ヒカル、と言う感じ。そこに、嫌みのないパーソナリティまで加わる訳ですから、そりゃ人気出るわな、と。モーニング娘等とはまた別の意味で(でも、一部ではリンクするのですけど)、もの凄いアイドルだと思います。

 ただ、好きかどうかと訊かれれば、僕は今でも迷わず「苦手です」と答えますけどね。元々、日本の R&B の特徴である打ち込み主体の軽くて薄いサウンドがそんなに得意ではありませんし、宇多田さんの声そのものもそんなに得意ではありませんし、最近の作品で時々聴かれる「作り込み過剰」に聴こえる歌や曲も苦手ですし、PV とかの過剰な演出もそんなに好きではないです。

 ただ、そういう個人的嗜好を込みで聴いても、やっぱり宇多田さんは稀有なミュージシャンだなぁ、と思わせてしまうところが、宇多田さんの凄いところではないでしょうかね。テキトーなまとめですけども。