「劇場版 仮面ライダー電王 & キバ クライマックス刑事」

 よく、何かの続編やリメイクをするときに「単なるファンサービスにはしたくない!」とか何とかぶっこいて、結果微妙なものを作るということが多々ありますが、この映画はその製作経緯もあってか完全無欠のファンサービス映画でありました。「電王」を観てきた人たちだけに贈る一回限りのお祭り騒ぎ。お祭りだから細かいこと気にすんなよ、「電王の感じ」がまた味わえるんだからそれでいーじゃない。そんな、ある種非常に志の低いとも言える大変潔い映画で御座いました。問題は、そこまで吹っ切っているのにあまり面白くないこと……。

 まず、「仮面ライダー電王 & キバ」という看板はほぼ大嘘。確かに同じ画面に収まってはいるけれど、話には全く絡まない上に、終盤は単なる「キバ」のプロモーションで、かつての「○大ライダー競演!」や戦隊 VS シリーズのような興奮は全く味わえませんでした。撮影時期や、CM の感じから多分そんな感じだろうなぁとは思ってはいましたけれど、まさかここまで何にも絡まないとは……。音也なんかエキストラ以下だぜ。せめて「キバ」側にもちゃんと共闘する理由とか経緯とか与えてあげて欲しかったなぁ。キバ側の「 22 年前」の設定と「電王」のタイムトラベル設定が殆ど絡んでないのも勿体ない。

 更に悪役のニセ電王は、やることは微妙にスケールが小さいし、戦ってみれば強さも微妙。「俺、誕生!」の牙王と比べると、とても魅力的な悪役とは言えないため、3 大ライダーに対抗する駒としては非常に弱く、結果全体のドラマの盛り上がりに欠けてしまったように思いました。

 アクション面でも、既にテレビシリーズでネタが出尽くしてしまったのか、キャラ漫才と融合したアクションは形を潜め、平成ライダーお得意の「どちらが一方的にやられる」タイプのアクションばっかりになってしまい、大変面白みに欠けました。折角の「電王 vs 電王」という画も全く活きてなかったし、アクションシーンではずーっと「勿体ない勿体ない……」と呟いておりましたよ。

 「良太郎達との再会の経緯が不明」「ゼロノスのカードは一体誰の記憶なんだ」「どんだけ公なんだデンライナー」などの細かい疑問は別に良いんです。お祭りだから。でも、お祭りだからこそ、もっと僕のような輩にもファンサービスして欲しかったなぁなんて思ってしまう訳ですよ。確かに良太郎とイマジン達の丁々発止のやりとりはほぼ鉄板で楽しかったけれど、僕はそこ以外の「電王」も好きだったんですよ! 更に久々の「ライダー競演」で、かつての「熱さ」も期待してたのになぁ……別に楽しくなかったわけじゃないけれど、期待していたものは 3 割も得られず、このような形で「電王」の幕が閉じてしまうのが非常に残念でなりません。

 ただ、最後のアクションシーンでハナまで戦っているのに、大事なところはちゃんと新人刑事に任せて「新人刑事の成長物語」として一本ちゃんと貫いていたところだけは、正しい「ヒーロー映画」で好感が持てましたが。あぁ、くっそー惜しいなぁ。