「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」

 劇場版「カブト」を観たときに予告が流れて、そのときはもの凄く震えたんですけど、それまで観てたテレビ版があまりにもあんまりだったために、結局どんどん先延ばしにしていたこの映画。この度、ようやく拝見。

 感動した…………

 話に抑揚無さ過ぎだろう、とか折角の登場なんだからもうちょっと勿体ぶれよ! とか無意味にも程があるカメオ出演連発は何なんだ、とかテレビ版に感じるような「痒いとこに手が届いてない感じ」は相変わらずありますけれど、ここに限ってはそんなの、どーーーーーーでもいい

 小学生の頃の夏休み、わくわくしながら「ウルトラマン」の再放送を待っていた気持ち。毎年毎年、夏休みの終わりと共にやって来る「ゼットン」登場の回(=最終回)に感じた辛さ。ある年から再放送が無くなったときの寂しさ。僕が覚えている、全ての「ウルトラマン」に関する記憶をガンガン揺さぶって、最後に優しく撫でて微笑んでくれるような映画でした。流石に泣きはしなかったけれど、顔はもう笑いっ放し。美しい、美しいなぁ。僕ぁもうダメだ。

 何よりターゲットがこれでもか! というくらい明確なのが素晴らしい。頭っから最後まで話の中心にウルトラマンが居て、更に「ウルトラマンに憧れる僕ら」が居る。それだけのことがなんと素晴らしいことか。

 ヒーローのあるべき姿を示すウルトラ兄弟、傷付き、それでも尚立ち上がったメビウスが語る「それがウルトラマンだ!」という言葉、自分の非力さに嘆き、塞ぎ込み、それでもウルトラマンの姿を観て自らを奮い立たせるタカト少年。その姿は「ウルトラマン」を観て育ったかつての僕ら。っていうか僕。タカト少年よ!! 僕はかつて君だったんだ!!(気持ち悪い)今はこんなしょーもない人間になってしまったけれど、夏休みに「ウルトラマン」と「仮面ライダー」を観ていた頃、確かに僕はタカト少年と同じ気持ちで、午後に自転車漕いで遊び回ってたんだよ。

 テレビ版でしょっ中やってる「語り合うだけ語り合った挙げ句にそのまま解決」という活劇の欠片も感じられないショボい演出はナリを潜め、殆どを「画」で魅せてくれるのが素晴らしい。例えばタカト少年はウルトラ兄弟の戦う姿を観て決意を新たにするし、ウルトラ兄弟メビウスも取り敢えず行動、行動! まぁ、「語り合うだけ」要員になりつつある科学特捜隊員達が殆どチョイ役なのでそうなっちゃうんでしょうけど、それが良い方向に作用しておった。

 画が「動」で溢れているから、こっちはず〜っと「画」に集中していられたからこそ、タカト少年への共感が凄まじかったのであった。そうだそうだ、そうでなくてはいけないよ。

 そしてこの映画の最大の売りであるウルトラ兄弟。まぁ、何の溜めもなくパッと登場するハヤタや、タロウがオリジナルキャストで出なかったことは残念極まりないけれど(兜甲児ばりに技名を叫ぶタロウも悪くはないけど)、それでもウルトラ兄弟 4 人が並び立つ画は「圧巻」の一言。CM でも使われたこのシーンなんて

「もしかしてあなたは……」
ウルトラマン。地球での名は、ハヤタだ

泣くよね………

 大体、冒頭のウルトラ兄弟の戦闘シーンからしてかなりクるもんがあるってのに、フル CG によるマクロス」ばりのわいくちゃ空中戦闘と繰り出される懐かしの技のコラボレーション(レッド吉田風に読んでね)に、僕はもうどうすることも出来ん。カッコイイ……カッコイイよ……!

 そんでもって、メビウスどう見ても毒に苦しんでるように見えないとか冷静さを欠いた戦いに見えないとか、「全く……」と思っているところに飛び込んでくる過去の映像記録。はぁ……ちくしょう、お前らそんなんで何もかも騙されると思うなよ!(号泣しながら)

 そんな感じで、ウルトラ兄弟の扱いに何の不満もなかっただけに、最後の最後で「合体」して「メビウス最強フォーム」で片付けてしまうことだけは、本当に残念。そこはお前、ウルトラ兄弟の支援を受け、ひとつひとつ障害を飛び越えながら、満身創痍のメビウスがだなぁ(以下略)。

 テレビ版は「最終三部作」に入っても相変わらずの感じで、個人的には全く乗っていけないのですが、この映画に関しては期待しているものの殆どをくれるという意味で非常に良い映画で御座いました。特に最近の、「過去作を否定するとカッコイイ」みたいな変なリメイクの風潮の中だけに、その輝きは眩しいぐらい。懐古趣味と言ったらそれまでだけど、それでもちゃんと「次の世代」へのメッセージをしっかり込めてくれるし、後味スッキリ。面白かったなぁ。

 で、DVD 買ってみようかな……と思ったら、既に発売から 2 ヶ月経とうとしているのにまだ「初回限定生産」が普通に残っていてビビった。あれ、やっぱり売れてないのかな……テレビがあんなだから……(しつこい)。