おぎやはぎ BEST LIVE 「JACK POT」

おぎやはぎ BEST LIVE 「JACK POT」 [DVD]

おぎやはぎ BEST LIVE 「JACK POT」 [DVD]

 何はなくとも鈴木拓。この男は本当に恐ろしい男だということを痛感しました。

 このビデオは、おぎやはぎの今までの単独ライブから厳選したコントを再演するベストアルバム的ライブらしい。で、終盤ではおぎやはぎドランクドラゴン東京03(当時アルファルファ)で構成される「東京ヌード」という特別ユニットでやったコントも再演されており、そこにドランクドラゴン・鈴木が登場しています。

 鈴木の恐ろしいところは、その壮絶なまでの「無自覚」さ。特典の音声解説での相方・塚地の言葉を借りれば、「こんな肩の力抜けてるなんてありえない」のです。おぎやはぎも、東京03も、塚地だって、それぞれの固有のキャラクターは当然あるものの、それぞれちゃんとコントの世界観に収まっているのに、ただ一人、鈴木だけは「鈴木拓」のまんま。周りはコント空間で一人だけ「現実」なので、必然、鈴木の居るところはまるで異空間です。

 例えば、鈴木が異空間を意図的に作り出しているのだとしたら、「巧者だなぁ」と思いますが、どう見たって天然。何故なら「壮絶なまでに普通」だから。何百人が注目する舞台の上で、更に異空間作って余計に注目させておいて、尚も普通でいられることは才能なのかも知れませんが、それにしたって共演者まで巻き込むその普通さはホントに異様。

 もう一点恐ろしいのは、このビデオでの鈴木に与えられた全ての役割が全く重要でない上に、言ってしまえば殆どエキストラみたいなものという点です。一本目ではウェイター、二本目では紙をちぎるだけ。これだけなのに、無自覚で笑いを取ってしまう凶悪さ。そりゃ音声解説でも矢作も驚くさ。一生懸命台詞覚えて芝居してる他の連中の立場は。

 他にも、小木のホモコントが異様な面白さだったとか、矢作噛みすぎとか、おぎやはぎってコントだと割とオーソドックスな感じなんだなーとか、色々感想はあった筈なんですが、終盤の、しかもたった二本のコントで、総出演時間 10 分も無かった鈴木拓の印象で全て吹き飛んでしまいました。あぁ、恐ろしや。

 塚地は、つくづくとんでもない奴を拾ってきたもんだなぁ、と思いました。