開高健「輝ける闇」

輝ける闇

輝ける闇

 ああ、随分読み終わるの時間掛かったなぁと思って調べてみたらきっちり 10 ヶ月かかってた。どうよ、この遅読ぶり(自慢にならない)。

 元々「チマリスの穴」で絶賛されていたのを読んで興味を持って(開高健関連の文章が読みたい方は「ジャーナル」をクリックして「DiaryINDEX」をクリックして「開高健」で検索しましょう)読み始めたのだけど、これがもうホントにワカラナイ。文章が現実と観念の間を行ったり来たりしていて、まずそれに自分の頭をついて行かせるのが大変で大変で、たった 2 ページ読み進むのに相当な体力を必要とする(あくまでも僕にとって)小説でした。

 ただ、その「行ったり来たり」が読んでいる内に振り子の往復運動の様に、一定のリズムを醸し出していることに気付いてからは早かった。後はもう、ピリピリした文章で描かれる観念に浸るだけでした。一応、著者のベトナム戦争の現地での体験を元にした小説なのですけど、別に「ベトナム戦争」はどの時代のどの戦争でも代入可能。実際それは著者の体験そのものに於いて代入されていき、「そこにあるもの」の意味を問われていきます。

 そして、「輝ける闇」というタイトルの意味が分かったときに、「戦争」という事象の一面の真実を見せられたような気になるのです。別に、それが正しいとか間違ってるとかは関係なく、ただその「見えてしまったもの」に、僕のような人間はただたふぁ脱力するしかありませんでした。面白かったけど、色んな意味で時間が要る小説でした。次読むとしたら、多分五年後ぐらいだろうなぁ……。

 あと、最後に恥をさらしておくと、これ読むまで僕は「かいこうけん」だと思っていましたよ。実際それで変換できるから、何の疑いも持っていなかったのに……人名って難しいよね(同意求む)。