ラーメンズ第 9 回公演「鯨」

鯨


 「なーーーんなーーーんだーーよぉぉぉぉぉぉぉー」。観た後の第一声。

 「漢字三部作」と言うから、何かひとつのコンセプトの元、一貫した舞台を演じ上げてるのかと思いきや、前作「椿」では訳分からなくなるほどの振り幅を見せつけられ、かと思えば今回「鯨」では、一切振り子が振れないザ・コントライブを見せられる羽目となりました。故に、何なんだよ、ハッキリしてくれよ!という思いで一杯なのであります。これはこれでその力量に感服するべきなのでしょうが、短期間に一気に観たため(←個人的事情)、その自由自在っぷりに若干イラッと来る次第です。

 そんなことを言いつつも、内容の方は実に僕の好みであります。今まで観たラーメンズのビデオの中では「CLASSIC」の次にツボに来る内容でした。どこにも奇を衒った箇所が無く、言ってしまえば全編とてもベタなので、ベタが大好きな僕には安心して観られると同時に、ベタとは言えその質は非常に高い故、しっかり笑わせてくれます。

 細かく見ていけば、例えば七本目に入っている「アカミー賞」なんかは、アメリカンジョーク的なノリを大分皮肉ったりしてるんでしょうけど、そこまで考えが及ばない僕でもしっかり笑える作りになっていますし、その他のコントにしても、何かの“意味”を臭わせつつもそこを抜きにしてもちゃんと面白いという、一見さんにも優しくて、“通”にも噛み応えがある、というかなり理想的な作りになっていると思います。そして、ちゃんと最後はちょっと温かい話でオトすのも、実にコントライブ的。上手いことやってます。

 その上、その「手法」に限定して見れば、目新しいものが結構あります。例えば、暗転してのワンショットコントや、台詞が全部テープで流されたりと、目新しい手法でベタをやる、妙な科学反応的な面白さも見せてくれます。それに、このビデオでは今まで観た中で初めて「第三者」の存在がハッキリと見えるのも見所。それは、ラストコント前に出てくるチェロ奏者もそうだし、はっきり目に見える形でなくても、例えば二本目の超能力コントで、袖から糸を引っ張る人だったり、そういうのがなんとなく感じられることで、「ああ、この舞台は色んな人で作り上げられたのだなぁ」と実感できるのも良いところだと思います。

 でも、何よりも僕が好きなのは、例えば四本目の台詞の一切無いアクションだけのコントとか、三本目のオチが踊りだったりとか、やっぱりそういう分かり易すぎるぐらいの“ベタ”。前者はヒゲダンス的だし、後者は初期のドリフっぽい。やっぱり僕はこういう笑いが大好きなんだなぁ、と自己確認する瞬間でありました。

 小林賢太郎自身が、「ベタ」ということ、引いてはドリフについてどう思ってるかなんて僕には知る由もありませんが、このビデオでは僕の中でのある種の“象徴”であるドリフと、ラーメンズを繋ぐラインが、また新たに出来たような気がして嬉しい体験をしました。でも、そう思わせといて、また違うところへ行くのがラーメンズ。これを追いかける人は、そりゃあ飽きないだろうなぁと思いました。